以前、テレビのコマーシャルで「ベタ踏み坂」ってありましたよね。まるで天まで昇るように、急な坂が続く道路。あれは島根県の「江島大橋」という、島根県松江市八束町から鳥取県境港市渡町へ中海をまたいで結ぶ橋でした。地面から一番高いところまで、およそ45メートルを切れ目なく一気に上っています。コマーシャルで使われていたのは、それを少し離れた場所から撮って、望遠レンズの圧縮効果を活かして傾斜が強調された映像です。遠くのものを近くに引き寄せる、つまり望遠レンズは距離感を圧縮する性質があるのですね。それに対して高さは圧縮されないので、坂の角度が急に見えるのです。
江島大橋ほどではないですが、一気に上る橋は探すと全国に結構あります。例えば大阪の港にある「なみはや大橋」なども、江島大橋とほぼ同じ高さまで一気に登っていて、なかなかのベタ踏み坂っぷりです。
兵庫県の芦屋市芦屋浜と神戸市東灘区を結ぶ県道722号の阪神高速湾岸線に並走する橋も、神戸側から見るとなかなかベタ踏み坂です。「東灘芦屋大橋」というなんかそのまんまな感じの名前の、2004年に開通した比較的新しい橋です。阪神淡路大震災のあと、災害時に人工島の孤立化を防ぐために複数の路線を整備しようという目的で、事業費172億円をかけて建設されたそうです。
兵庫県道573号と、それに続く県道722号は絶景ルート
県道722号は、西宮市鳴尾から始まる県道573号芦屋鳴尾浜線から交差というか、そのままっていう感じで繋がっています。鳴尾浜から芦屋までのこの道は湾岸線の側道のような道路で、こちらは阪神淡路大震災以前に開通していました。左右に海が見えて非常に景色が良いです。鳴尾浜から入って西へ向かうと高い橋が連続して、ちょっと大袈裟ですがなんとなくアイランドホッピングの空の旅のような気分になれます。
そして芦屋浜で県道722号に入って、最後に現れるのが東灘芦屋大橋です。橋は南から北へ、湾岸線をくぐりながら高度を上げていって、頂上でいきなり正面に神戸の街が見えます。夕暮れ以降の時間帯だと、不意に「1000万ドルの夜景」ともいわれる有名な神戸の夜景がひろがって、思わず声が漏れるような美しさです。
さて、この橋を今度は「ベタ踏み坂に見える側」、神戸側から渡ってみます。写真で見ると、なんとなくめくれ返りそうな坂にも見えますが、普通にクルマが通る道路ですから、もちろん実際にはそれほどの急坂ではありません。ただ、そこそこ急な坂が長く続く感じです。原付とかだとかなりエンジンが頑張ってる感じになるでしょうか。
坂の頂上の手前から、右手の湾岸線越しに青い海と潮芦屋の綺麗な街並みが見えてきます。高度を上げながら見るこの景色は、なんとなく海外のリゾートのようです。そして頂上からは、内海とともに、70年代に流行ったスペースエイジ的な近未来感を漂わせる芦屋浜シーサイドタウンの景色が目に飛び込んできます。
神戸市東灘区から西宮市鳴尾浜まで、とても気持ちのいいこの県道は、比較的交通量も少なく、国道43号の迂回ルートとしても貴重です。