以前、自動車のテレビCMで有名になった「ベタ踏み坂」というのがあります。まるで天に続くようにも見える、長くて急な上り坂。ここを上る自動車はきっと、アクセルを目一杯床まで踏まないと上らないだろう。ベタ踏みでないと上れない坂、という意味ですね。
元ネタになったのは江島大橋…それに負けない橋が大阪港にあります
CMに出てきたあの坂道は、鳥取県と島根県を結んでいる江島大橋という場所です。全長1.7キロメートル、一番高いところで約44メートル。PCラーメン工法の橋としては日本最長の橋なんだそうです。
実はこの橋に負けずとも劣らない「ベタ踏み坂」が大阪にもあります。大阪市港区海岸通四丁目と大正区の鶴浜を結ぶ府道5号線なみはや大橋です。こちらも全長1.7キロメートル、高さは45メートル。江島大橋とほぼ同じ規模ですね。
この橋は1977年に着工し、1995年に完成しました。工期が18年もかかっているのは、おそらくこの高さと、あと橋自体が大きくカーブしているという構造の難しさのせいでしょうか。船舶の行き交う港湾部の橋なので、下を船が通れるようにこの高さが必要だったのですね。
完成当時は有料道路だったこのなみはや大橋ですが、2014年に無料化されました。
この橋を港区側から見ると、まさに「ベタ踏み坂」です。実は大正区側の方が勾配自体はきついのですが、中間部分に有料道路だった頃の料金所跡があり、ここが踊り場のように平坦になっているので、ひとつながりの急勾配に見えないのですね。
あのすごい坂、実は写真の撮り方に秘密があります
さて、このように写真では険しく見える坂道ですが、実際に走ってみるとそうそう厳しいわけではありません。一般の交通に供されている道路ですから、ごく普通の自動車でももちろん問題なく渡ることができる傾斜です。
実は本家の「ベタ踏み坂」江島大橋も、このなみはや大橋も、こんなふうに険しく見えるのは写真の撮り方に秘密があるのです。
特にカメラに詳しくない方でも、「望遠レンズ」という言葉は聞いたことがあると思います。望遠鏡のように、遠くのものを近くに引き寄せて写すレンズです。このレンズで写すと、遠くのものが近くに見える分、距離感が圧縮されるのです。遠くのものと近くのものが、グッと接近して見えるんですね。
最近、コロナ渦の報道に絡んで、「街の様子を望遠レンズで写すと人が密になっているように見える」というお話がありました。本当はそれほど人混みではないのに、まるで混雑しているような写真が撮れてしまうということです。
それと同じ理屈ですね。高さはそのままで距離が縮む分だけ坂道の角度が急に見える、ということです。
大阪市内の絶景ポイントです
タネ明かしをしてしまうとそういうことなのですが、このなみはや大橋、実際に高さは高いです。地上45メートルというとマンションの15階くらいありますから、非常に見晴らしがいいです。また、しっかりと歩道も整備されているので、徒歩でも渡ることができます。
大パノラマで広がる大阪港の景色は素晴らしいですし、特に夕暮れから夜にかけては夜景がとても美しいです。大阪港の魅力を再発見できるかもしれません。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。