新型コロナウイルスの感染拡大から既に2年になろうとしているが、その間、米中対立は他の欧米諸国を巻き込む形で拡大している。新疆ウイグルや香港、台湾を巡る情勢、新型コロナウイルスの真相解明など、欧米諸国の中国への不信感はこれまでになく高まっていると言えるだろう。そして、その動きは主要国だけでなく、いわゆる中小国からも如実に見られるようになっている。
たとえば、最近、バルト三国の1つであるリトアニアは、国内で販売される中国製スマートフォンに検閲機構が搭載されているとして、国民に対して買わないよう、持っていれば処分するよう呼び掛けた。中国が進めるアジア、ヨーロッパ、アフリカ大陸にまたがる経済圏構想「一帯一路」について、リトアニアはこれまでその恩恵を受けられることを期待していたが、思うような支援や経済成長が得られないなど不満を高め、「脱中国、台湾接近」を進めている。新型コロナやウイグルの問題はいっそうそれに拍車を掛けている。
一方、中小国の中国離れを連想させるデータも最近公開された。米国のシンクタンク、ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所は今年9月、中国の一帯一路に関する報告書を発表し、「今後、一帯一路は失速する」と結論付けた。同報告書によると、マレーシアでは総額116億ドル、カザフスタンで15億ドル、ボリビアで10億ドルもの経済プロジェクトが中止になるなどし、中国への反発や抵抗の声が強くなっているという。また、一帯一路による経済プロジェクト全体の35%で環境汚染や汚職、労働違反などの問題が発生したという。日本ではあまり「反・一帯一路」の報道はされないが、筆者が知る海外の多くの専門家からも同様の声が多く聞かれる。
習政権としては、米国を中心に欧米との対立はかなり予測していたと思われるが、中小国の中国離れはどの程度予測できていただろうか。習政権は欧米に依存しない自らの“中国ネットワーク”を各地に拡大する狙いがあるが、欧米との対立以上に中小国の中国離れは大きな痛手だろう。中小国を取り巻くことで中国も欧米に対抗できるという現実もあり、中小国の中国離れが進めば待っているのは中国の孤立化だ。
そして、習政権には来年2月の北京冬季五輪を成功させるという国家的目標がある。それを実現するためには、今の時期はできるだけ多くの国と関係を悪化させたくないのが本音だろう。しかし、今起きているのは他国が自発的に中国と距離を置き始めているということで、どこまで習政権がそれを抑制できるかは分からない状況だ。しかも、中国離れは中欧、東欧諸国で最近顕著にみられるが、冬季五輪ということで参加国の多くを欧米諸国が占めることになり、中国としては難しいかじ取りとなっている。
一方、こういった動きを懸念したのか、孔鉉佑(こうげんゆう)駐日中国大使は10月27日、ツイッターのアカウントを開設し、今後の日中関係発展と相互理解促進のために発信を強化していくとツイートとした。同大使はツイートをすべて日本語で行っているが、今後は北京冬季五輪に関する情報も発信していくという。開設後、フォロワー数も増加傾向にあるが、これも諸外国との関係悪化をできるだけ抑制する一環だと思われる。北京冬季五輪が近づくにつれ、習政権はこの難題にどう向き合っていくのだろうか。