「投票に行きたくても行けない」 政治を思う16歳高校生、衆院選をどう見る

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 衆院選が始まりました。総務省によると、10月18日時点で全国に1億562万人の有権者がいるそうです。2017年の前回、14年の前々回ともに投票率が50%台前半にとどまるなど、特に若い世代の政治参加が課題になっていますが、中には投票したくてもできない18歳未満の若者たちもいます。行政や政治に関心を持ち、行動を起こしている16歳の高校生に、今回の選挙をどう見ているか聞きました。

 京都市上京区在住で京都先端科学大付属高2年の仲一朔さん(16)は、国政や京都市政で疑問に思ったことについて、京都市の「市長への手紙」制度や地元の市会議員を通じて政策提案をしています。彼は現在の政治や社会をどう見ているのでしょうか。

 -新型コロナウイルス感染拡大による社会の変化をどう見ていますか。

 仲さん「(京都の繁華街)河原町通を歩くと空きテナントが増え、さみしい町になっているように感じます。周囲では退学する友だちが増えています。昨年に休校が長期に及び、学校に行くリズムを崩したことが原因のようです。小中高と一緒だった友人も高校をやめてしまいました」

 -若年層では自殺が増えています。2020年の自殺者数は、前年に比べて912人増の2万1081人。このうち19歳までが118人増、20~29歳が404人増と若い世代の増加が顕著でした。

 「自殺が多いことは気になります。国としておかしくなっているのが数字に現れていると感じています。『死にたい』と思ってしまうのは個人に原因があるのではなく、やはり政治にも責任があると考えています」

 -そもそもなぜ政治に興味を持ったのですか。

 「小学校高学年のころ、社会の授業が好きで政治に興味を持ちました。さらに2019年の参院選の際、テレビの党首討論を見て面白いと思いました。国会で見ているのとは違う政策論争を見ることができました」

 「その後は、生理の貧困問題に取り組むよう、京都市長に意見が伝えられる『市長への手紙』を活用したり、(同性カップルの子どもも家族として公認する)ファミリーシップ制度を導入するよう、京都市会に陳情をしたりしました。ほかにも、友人と高野川のごみ拾いのボランティアを行っています」

 -若者の政治離れとよく言われますが、若年層の低投票率をどのように見ていますか。

 「若者は政治に興味がないわけではないと思います。生活が厳しい、子育てが大変といった理由で政治に興味を持つ余裕がない。政治のことを考えられるゆとりを持てるように、政治の側が環境を整えるべきだと考えています。ただ『投票に行ってくれ』と言うのは無責任ではないか、と考えています」

 「セキュリティーの問題を解決しないといけませんが、スマートフォンで投票できるようにならないか、と思います。さまざまな事情で投票に行けない人がいます。国民の権利を守る一つの方法として考えてほしいです。あとは公職選挙法のややこしさも解決してほしい。やる気を持った若者がいて関わろうとしても、『政治活動はいいけど、選挙活動はだめ』などと言われると、意欲をそがれてしまうのではないでしょうか」

 -今回の総選挙では16歳で投票ができません。どのように感じていますか。

 「投票に行けるなら行きたいです。(5年前に)選挙権が18歳以上に引き下げられましたが、被選挙権も同じにした方がいい。さらにできれば選挙権は16歳以上に拡大した方がいいと思っています。16歳ですでに社会に出て働いている人もいます」

 -ところで高校生で政治や行政に発信する活動をしていると、それだけで批判を浴びませんか。

 「『高校生が政治の何を分かっているのか』などと言われることがあります。でも良くも悪くもこの現状の社会をつくってきたのは大人の世代。高校生の意見くらい聞いてほしいと思います」

 -31日の投開票日はどう過ごしますか。

 「両親はいつも投票に行っているので、今回も行ってくれると思います。31日はハロウィーンなので友だちと遊んで、夜は開票速報を見守りたいと思います」

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