「木版画で笑顔になりませんか」プロから初心者まで260点を展示した木版画展が好評 兵庫・神戸

八木 純子 八木 純子

 木の温もりが伝わる木版画「日韓友好版画・挿絵(イラスト)展」(入場無料)が兵庫県立美術館ギャラリー棟3階で開催され、好評を博している。これは神戸市在住の版画家で日韓友好版画協会の理事長、韓杏蘭(はん・へんらん)さんらが主催したもので今年で2回目。9日は神戸市長賞などの作品が発表されている。16日まで。

小学生から90代まで、プロアマ問わず幅広く作品を展示

 木版画に魅せられた女性が版画協会を立ち上げ、ボランティアで教室を開催。コロナ禍で苦悩する人たちも多数参加し、作品を作ることでやる気や希望を見い出す。

 現在、兵庫県立美術館ギャラリー棟3階で開かれている「日韓友好版画・挿絵(イラスト)展」は、そんな市井の人たちとともにつくりあげたもので、子どもから90代まで幅広い世代が参加しているのが特徴だ。コロナ禍で海外からの出品はオーストラリアのみだが、神戸市内の小学生の作品約150点を含む約260点を展示していて、見応えもある。出品者にはプロもいれば、初めて木版画をしたという初心者も目立つ。

 主催した韓杏蘭さんは韓国・木浦(モッポ)市に生まれ、1987年に来日。いまから10年前、木版画のもつ「温かさ」にひかれ、木版画を始めた一人だ。木版画はほぼ独学というが、日本・ギリシャ現代版画交流展や日本・ブルガリア合同展などに入選し、版画家として注目を集めてきた。

 また個展などを通して、韓国や東京、京都、神戸などでも作品を発表。「木版画をすればするほど、その面白さにハマっていきました。というのも、木版画は同じ版木から作るのに、刷る度に濃淡や表情が違うので、毎回楽しくして…。いつの間にか、木版画の楽しさを私の回りの人にも知ってもらいたいと、版画協会まで立ち上げました」という。

コロナ禍でも開催してきたボランティアの木版画教室

 そこで2020年に木版画の魅力を広めたいと「日韓友好版画協会」を設立。ちょうど、日本国内ではコロナ禍が広がり始めた時期と重なり、周囲の環境が一変、人々の生活が変わり始めた時期だった。

 演奏する機会がなくなったミュージシャンや、仕事が減った人たち…。芸術どころではなくなっていたが、韓杏蘭さんは「こういう時代だからこそ、夢や希望が必要」と考えた。そして、コロナ禍で苦悩する知人に向けて「木版画をしませんか」と積極的に呼びかけて回った。

 最初は「木版画どころではない」といっていた人たちも、韓杏蘭さんの「コロナ時代だからこそ、木版画で笑顔になりませんか」という熱心な勧誘に、賛同する人が少しずつ増えていったそうだ。

 もっとも、木版画の教室を始めたものの、仕事がなくなるなど大変な状況にある人からお金はとれない…。そんな中、協会や教室を維持し続けたいという韓杏蘭さんをバックアップするメンバーも出てきて、無料で木版画教室を開催し続けてこられた。

 「コロナ禍で落ち込むのではなく、多くの人に木版画の楽しさを知っていただき、やる気や元気をつけてほしかった」と韓杏蘭さん。実際、版画教室に通った参加者は初めて彫刻刀を持ち、作品を版木に掘るのも初めてという人がほとんど。「作品を作るのは楽しいし、やる気がでてきた」「バレンで擦って、紙をはがすときのワクワク感がたまらない」と話した。そんな人たちのために発表の場を提供したいと考えたのが、この版画展だった。

木版画作品を通して、今後も多くの人を勇気づけたい!

 開催初日となった10月7日からは多くの人が来館。9日には表彰式があり、多数の作品が賞を取っている。日本の甲冑に魅せられて、それを作品にした韓杏蘭さんの大作「甲冑」は神戸市長賞に。韓杏蘭さんの指導で作品を作りはじめた木版画教室のメンバーで、版画歴2年のMichiさんの「THE EMPEROR」は神戸新聞社賞に。同様に教室メンバーの漫画家、亀ヰリヨウさんの挿絵作品は兵庫県立美術館長賞に選ばれている。

 「作品はみんな好きなテーマで、自由にのびのびと作っていただきました。教室の方のメンバーが自分の親や仲間を連れて来るので、毎回、人数が膨れ上がって、うれしい悲鳴をあげています。いつまでボランティアの教室がもつかわかりませんが、今後も活動は続けていきたいし、来年も開催したい。

 今回の版画展では作品を作る楽しさだけでなく、作品を通して多くの人が元気になっていただければ、うれしいとも思いす。ぜひ、お越しください」と韓杏蘭さんは熱く語っていた。

「日韓友好版画・挿絵(イラスト)展」
会場:兵庫県立美術館ギャラリー棟3階(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)/10月16日(土曜)まで。10:00~17:00※休館日10月11日(月曜)/無料

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース