神奈川県出身の女子大生が、琵琶湖の漁師を目指して滋賀県高島市マキノ町で修業している。卒業後、就業できれば琵琶湖で初の女性漁師になるといい、師匠役の漁師中村清作さん(36)は「どんな作業でも、やる気が前面に出ているのがとても良い」と評価。後継者難に悩む地元の期待を集めている。
東京海洋大3回生の田村志帆さん(21)。神奈川県相模原市で生まれ育ち、幼少期から魚に興味があった。近所の相模川でフナやアユなどの淡水魚を捕って観察することが好きだったという。その後、漁業への関心も高まり、大学では水産経済や漁業経営を学んできた。
昨年春からのコロナ禍の影響で、大学はオンライン講義に移行。どこにいても講義が受けられることから、田村さんはこの期間を漁業の現場を肌で知る機会にしようと、知人のつてを頼って日本各地の漁業者を訪ねることにした。昨夏には船舶免許2級も取得。京都府宮津市のトリガイや京都府伊根町のカキの養殖をはじめ、秋田県では底引き網漁、富山県ではホタルイカ漁の見学や体験をしてきた。
幼少期から慣れ親しんだ淡水魚の漁業にも触れてみたいと、今年の春ごろからは滋賀県高島市内の各漁協を訪問。8月初めからは滋賀県の短期研修制度「しがの漁業担い手ステップアップサポート事業」を利用し、中村さんの手伝いを始めた。自ら操船して沖合でスッポンのはえ縄漁をしたり、海津漁協(マキノ町)でビワマスなどをさばく作業に携わったりして、湖の恵みとの関わりを体感している。
県水産課によると、これまで女性の漁業従事者はいたものの、主に家族の営みで、個人の漁業者として所得を得ている人はいなかった。県内には2018年の統計で836人の漁業従事者がいるが、田村さんが自身で水揚げを行う事業主となれば、琵琶湖で生計を立てる初めての女性漁師になるという。
時間ごとに変化していく琵琶湖の風景に魅力を感じているという田村さんは「自然を間近に感じられる生活に憧れがある。女性ということは意識せず、自分なりの漁師としてのやりかたを探していきたい」と話している。