秋から冬に滋賀県だけで見られる特別な雲の存在を、光泉カトリック高(滋賀県草津市野路町)自然探究部の生徒たちが確認した。地形や風の影響で出現するローター雲と呼ばれる雲の一種だが、琵琶湖の存在が大きく影響し、滋賀固有の成因や特徴を持つという。生徒たちは、雲に「琵琶湖六郎」と愛称をつけ、論文にまとめ上げた。
気象予報士の顧問と毎日観測
ローター雲は、地形などの影響で気流が波打って発生する円筒状の雲。上空の気温や湿度、風向・風速など、多様な条件がそろった時だけ見られるという。
昨年11月、自然探究部顧問で気象予報士の村山保さんが、学校上空に長く延びる特徴的な雲を見つけた。「滋賀だけに出る雲かも」と説明を聞いた部員たちも興味を持ち、このうち15人が観測を開始。昨年11月~今年8月、空の様子や上空の風向き、気圧配置などを毎日調べた。
昨秋~冬に16回出現、いずれも冬型の日に
すると、ローター雲は昨年11月~今年2月に16回観測できた。いずれも冬型の気圧配置で、西寄りの風が吹いたときに出現した。出現時間は、早朝から午前9時頃までで、昼頃には消滅した。
顕著なものは、円筒の直径が100メートル以上、長さが南北50キロ以上に延び、気象庁の気象衛星「ひまわり」の画像でも確認できた。
琵琶湖と比叡山が大きく影響
観測結果を分析すると、西寄りの季節風が比叡山や比良山の山並みに垂直方向にぶつかって越えていく際、気流が上空千メートル付近で波打ち、南北に長い回転軸ができて雲が発生しているとみられることが判明した。
似た気象条件の京都盆地には発生しないため、琵琶湖から蒸発した水蒸気で湿度が高いことが影響している可能性が高いという。
村山さんによると、ローター雲は岩手県などでも観測例があるが、これほど高頻度で鮮明に出現するのは全国的に珍しく、「琵琶湖の存在と比叡・比良の山並みが、滋賀特有の雲を生んでいる」と解説する。
なぜ琵琶湖六郎なの
部員たちは、京都に伝わる雷雲「丹波太郎」「山城次郎」などにちなみ、琵琶湖六郎と愛称を付けた。今年8月には、成果を論文にまとめ、「全国高校生理科・科学論文大賞」などに応募した。
連日観測を続けた2年馬場智哉君(17)=近江八幡市=は「滋賀だけに出るという特別感がうれしい」、2年木村彩乃さん(16)=草津市=は「小さい頃から、雲を見るのが好きだった。なんでこんな雲ができるのか、研究できてよかった」と話した。