昔は排気量360ccで車検が要らなかった!? どんどん進化する軽自動車…規格の移り変わりを振り返ってみた

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 日本独自の規格として、税金などの維持費の安さ、また低燃費やコンパクトな取り回しの良さで人気の軽自動車。大きさや排気量など、その枠は時代と共に変わってきました。ここでちょっと大まかに振り返ってみたいと思います。

「軽自動車」という規格が誕生したのは1949年

 戦後間もない1949年7月、最初の軽自動車の規格が制定されました。長さ2.8メートル、幅1メートル、高さ2メートル以内。排気量は4サイクルで150cc、2サイクルで100cc以内。そして出力1.2kw(1.6馬力)まで、というものでした。

 面白いのはこのとき、2輪や3輪、4輪の区別なくこの枠だった、ということでしょう。長さ2.8メートル高さ2メートルのバイク、なんていうのもアリだったんですね。150ccでハーレーの大きなモデルよりも長いバイク。まあそんな妙なものは誰も作ろうとしなかったと思いますけど。

 その後、1954年までの5年間は毎年のように規格が変更されます。2輪と3輪4輪が区別されて、さらに農耕作業車という新しいカテゴリーが加えられました。

 この時点で3輪車と4輪車の規格は、全長3.0メートル、幅1.3メートル、高さ2.0メートル、排気量360ccになりました。2輪車は全長2.5メートル、幅1.3メートル、高さ2.0メートル、排気量250ccです。

 そして1960年には定格出力の規格が撤廃されました。1950年に2.0kwに改訂されたようですが、「このときまで2.7馬力の規制がかかっていた」というのはちょっと驚きですね。2021年現在、スーパーカブ50の現行モデルで、最高出力は3.7馬力ですから、それ以下のパワーで3輪や4輪の自動車を走らせるというのはなかなか大変だったと思います。たぶん現在の道路事情ではこわくて乗れない乗り物だったでしょうね。

 ただ、あの「てんとう虫」として有名なスバル360は1958年にデビューしてます。なので最初のモデルはこの出力規制を受けていたはずですよね。しかし当初からカタログデータで16psということになってますから、この辺りの事情はちょっとわかりません。現在の原付の電動車に適用されている「定格出力0.6kw」のように、この「定格出力」と「最高出力」を内燃機関でも分けて考えていたのでしょうか。あるいは、実はこの頃にはもうこの規格は有名無実というか、ゆるくなっていたのでしょうか。

 なお1963年、農耕作業車は軽自動車の枠から外れて、小型特殊自動車というカテゴリーになりました。

その後、軽自動車はどんどん進化した

 最初は本当に簡素な自動車としてスタートした軽自動車ですが、1970年代頃にはその枠の中でどんどん進化して、普通車と遜色ないくらいに高性能化、一般公道をそれなりのスピードで走るようになります。そうなるとそれまで車検の制度がなかった軽自動車も「ちょっと具合悪くない?」ってことで、1973年からは車検を受けなければならないことになりました。

 続いて1975年、全長3.2メートル、幅1.4メートル、排気量550ccに規格が拡大されます。このときの改定はかなり大きかったと筆者も憶えています。長さで20センチ、幅で10センチ大きくなると、かなり見た目にも違いがありましたし、実際に乗ってみると、それまで感じていた圧迫感が一気に少なくなりました。

 それまで運転席と助手席の隙間がほとんどなくて、シフトレバーが助手席の人の太ももに当たったりしていたのが無くなりましたからね。

 1990年には、全長が10センチ拡大されて3.3メートルに、排気量も110cc大きくなって現在と同じ660ccになりました。続いて1998年にはさらに全長が3.4メートルに、幅も8センチ広がって1.48メートルとされました。これは主に衝突安全性の向上のため、ということです。

 もともとは安くて簡易な乗り物としてスタートした軽自動車ですが、メーカーの努力の結果、性能や居住性もどんどん良くなりました。一方でサイズの拡大や安全性能の向上のための改良もあって、車重が1トンを超えるものも見られるようになっています。1980年代の1.5リッター程度の普通車が800〜900kgくらいだったことを考えると、もはやコンパクトな普通乗用車との差はあまりないような気もします。しかし日常的な乗り物として、維持費の安い「軽自動車」というカテゴリーはやっぱり有り難いものですね。

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