さえない阪神タイガース「銘柄」 優勝しても経済効果は小さい?

山本 学 山本 学

 プロ野球セリーグの阪神タイガースが強い。40勝に一番乗りで、7年ぶりの8連勝を記録。苦手とされてきた交流戦もリーグ首位を快走した(交流戦は2位)。今季は「優勝」の2文字が、そろそろ見えてきたと言えそうだ。しかし、株式市場では阪神タイガースの「関連銘柄」が、そろいもそろってさえない展開で推移している。バブル経済の入り口になった1985年の日本一を引用するまでもなく、阪神の優勝は株式市場を活性化するとの経験則(アノマリー)が今回は通用しない。阪神優勝期待で日経平均株価4万円―とならないのはなぜだろうか。

 まずは阪神タイガースの関連銘柄を確認しておきたい。グループの持ち株会社である阪急阪神ホールディングス(証券コード9042)がある。次に阪急阪神百貨店の持ち株会社であるエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O、8242)が挙げられる。この2銘柄は阪神タイガースの親会社である阪神電気鉄道とも資本関係があり、事業上も相互に影響がある関連銘柄の筆頭格といえる。

 それから阪神タイガースの優勝で恩恵を受ける銘柄だ。たとえば阪神タイガースのオフィシャルスポンサーである上新電機(8173)、ミズノ(8022)、ローソン(2651)、アサヒビール親会社のアサヒグループホールディングス(2502)4社。さらに首都圏で3店舗しかないタイガースグッズショップの1つがある京王百貨店の親会社である京王電鉄(9008)、また野球とは直接関係ないが阪神間などで居酒屋「酔虎伝」を展開するマルシェ(7524)などだ。

 さらに、なぜか阪神タイガースが強いと買われる銘柄、というのもある。たとえばホースなど自動車用の樹脂製品を作るタイガースポリマー(4231)、船舶用の主機関などを製造する阪神内燃機工(6018)、オフィスビルや場外馬券売り場などのビルを賃貸する京阪神ビルディング(8818)などだ。ビジネス上の関係はゼロだが、社名に「タイガース」「阪神」が入っているというだけだが、関連銘柄とされている。

 銘柄を見渡して気付くのは、新型コロナウイルスの感染拡大が収益に影響した会社が多いということだ。甲子園球場での阪神戦は一時、無観客で開催した。兵庫県も「まん延防止等重点措置」の対象で現在も上限は1万人。甲子園球場に向かう人で阪神電車の乗客数が押し上げられるどころか、例年よりも減っている。阪神が優勝しても、大阪・梅田の百貨店で優勝セールが開催できるかどうかも現時点では微妙だ。両銘柄とも新柄コロナの逆風で正直、タイガースどころではないのが現状だ。

 同様のことは、ほかの関連銘柄にもいえる。上新電機は前期にパソコンや液晶テレビが好調だった反動で、今期は減収減益の見通しだ。ローソンは増収増益見通しだが中長期的な他業態との競争激化が懸念材料。ミズノは新型コロナが真正面から逆風だし、アサヒの増収増益見通しは昨年買収した海外子会社の通年寄与で、阪神が優勝したところで国内事業の上振れ余地が見込みにくい。京王は阪急阪神HDと同じ理由で買いづらいし、居酒屋はもっと厳しい。例年なら阪神が優勝すると1000億円を超すとされる経済効果が、今回は半分程度にとどまるといった試算もあるようだ。

 やはり、阪神タイガース関連の中核銘柄が盛り上がらないと、タイガースポリマーや阪神内燃機といった、外縁ともいえる関連銘柄にも買いの手が伸びないようだ。やはり今後の鍵になるのは、ワクチン接種と治療薬の普及だろう。優勝セールはできるのか。日本シリーズでは甲子園に観客が何人まで入れるのか。ワクチンを接種した人の比率が高まるまでの時間稼ぎという意味では、阪神が優勝を決めるまでに少しでも2位の巨人に粘ってもらったほうがいいということか。だとすると6月27日までの阪神3連敗も、株式相場にも好影響になるかもしれない。

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