木村花さんを追い詰めた誹謗中傷 そこで「犯人探し」を始めてしまう間違った正義

くま ゆうこ くま ゆうこ
スターダムの後楽園大会に出場した木村花さん(2020年1月19日)
スターダムの後楽園大会に出場した木村花さん(2020年1月19日)

フジテレビの人気番組『テラスハウス』に出演中だった女子プロレスラーの木村花さんが22歳で亡くなったと、テレビやネットニュースで報じられ、多くの人が悲しみに包まれています。報道によると、以前から『テラスハウス』の視聴者による匿名での誹謗中傷で心を痛めていたとのこと。当然、Twitterでも話題になり、度を越したSNS書き込みについて法規制を求める動きがではじめています。そして、ショックと悲しみと怒りがゆえに、ネット上では案の定、花さんに対する誹謗中傷をSNSに書き込んだ人を探す、いわゆる「犯人探し」がはじまりました。

許せない!匿名での誹謗中傷 だけど…

子どものいじめでも、ネットを使った誹謗中傷は後をたちません。

私も、以前から匿名での誹謗中傷については憤りを覚えていて、法規制が必要だと思ってきました。いじめの被害者のことをSNSや掲示板で「嘘つき」と書き込んだり、自分の姿は見せずに、被害者の個人情報を晒したり。書きたい放題の現状についてなんとかならないものかと、弁護士に聞いたこともありました。

(参考:弁護士に聞く!子どもの「ネットいじめ」の現状、何を書いたら「犯罪」になるの?

誹謗中傷は悲しいことです。私も以前、ネット上で掲載されている記事の内容を「作り話だ」と書かれたりしたことがありました。

もちろんちゃんと取材をした記事だったため、少々傷つきましたが、いろいろな意見があるものだとスルーしました。ただ、その時の書かれ方が「この記事はこのようなことが書かれているので、私はここに問題があると思います」といったようなものなら良かったのですが、明らかに文章の口調が気持ちをあおるものだったので、心が傷ついたという結果になったのだと思います。

誹謗中傷と意見の違い

ただ今回、なんだか違和感があるなのは、「この人が花さんを追い詰めた」とか「この人が悪い」とTwitterの画面のキャプチャーをつけて晒している人がいることです。

花さんのツイートによると、毎日100件近くの「率直な意見」が寄せられていたといいます。「死ね」「気持ち悪い」「消えろ」といった書き込みもあったようで、それらは許されるべきではありません。

しかし、その中には、これは批判されるべきものなのか?と思うものもあります。

「あのテレビでの態度は花ちゃんがおかしいと思う」
「自己中心的な態度に見えた」
「『テラスハウス』を卒業してほしい」
「好きだったけど失望した」
「フォロー外しました」

執拗に同じメッセージを送ったりしているならともかく、これはあくまで「意見」です。

誹謗中傷と意見の違いは、判断は難しいですが「攻撃性」があるかないかだと思います。人が傷つく言葉かどうか、相手がどう思うか。それを考えることができているのか。

自分がSNSに書いたものが、花さんを死に追い込んだ犯人だといわれ、どんどん拡散されていくなんて、想像するだけでも恐ろしいです。

ネットがなければの極論

ここまでくると、TwitterやInstagramという「匿名で投稿できるSNS」がなければ良かったと極論をいう人も増えています。実名にしろという人もいます。

でも、本当にそうなのでしょうか。SNSは、個人が立場や年齢、所属に関係なく意見を言えるところです。匿名であるからこそ言えることもあるわけで、全て実名である必要もないと私は思います。

忘れてはいけないのは、今もなお、花さんと同じように、知らない誰かから「消えろ」「学校にくるな」「死ね」などといわれている子どもがいるということです。もちろん大人も。いじめの場合は多くは、知らないだれかではなく、多くは近くの友達です。

今、必死に犯人探しをしている人は、誹謗中傷に対して本当に憤っているのであれば、まずはあなたの近くにいる、ネットいじめで傷ついている人や誹謗中傷で悩まされている人を助けてほしいと思います。

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