「阡陌」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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「阡」も「陌」も見慣れない漢字で、一見どう読んでいいかよくわからない。
形声文字は、左側の部首が意味を、右側のつくりが音を表すため、「阡」は「千」と同じく読み方は「せん」。「陌」は「百」と同じだが、「ひゃく」ではなく「はく」と読む。『奥の細道』の序文「月日は百代の過客にして」の「百代」を「はくたい」と読むのと同じだ。従って、「阡陌」と書いて「せんぱく」である。
さて、読み方が分かったところでその意味だが、『日本国語大辞典』によると、古代、南北の路を「阡」、東西の路を「陌」といったというが、逆に「阡」が東西、「陌」が南北の路であるという説もあるらしい。
いずれにせよ、「阡陌」とつなげることで、東西と南北の道が交わるところを指し、広く「ちまた」という意味に使われたようだ。いわば、「辻」という言葉のニュアンスに近い。
現在は、神戸市や三重県津市などにある。