万博までに“大阪湾”をきれいにするで! 藻場・干潟をつくりゴミ回収装置を設置…プロジェクトが始動

平藤 清刀 平藤 清刀

2025年に開催される予定の大阪・関西万博までに大阪湾をきれいにするという「オーシャン・リハビリテーション・プロジェクト」が動き始める。壮大なプロジェクトを立ち上げたのは、大阪府守口市で障がい者の就労継続支援A型事業所を管理運営する森川誠榮さん。

「3年ほど前に、大阪青年会議所の理事をやっている知人から『SDGs(持続可能な開発目標)って知ってるか?』という話を聞いたのですが、予備知識がなくて『なんやそれ?』と返してしまったんです。ともかく勉強してみたら、その中にあった『海の豊かさを守ろう』という課題に興味を惹かれました」

始まりはSDGsに興味をもったこと

 森川さんはプラスチックごみの削減をしようと、地元の有志を募って「クリーンアップレンジャーズ」というグループを結成し、2年ほど前から淀川河川敷の清掃活動を行っている。1回あたり1時間30分と決めて河川敷にポイ捨てされたり風で飛ばされてきたりしたゴミを拾い集める。だが、その量があまりにも多いため、なかなか距離を延ばせないという。

「そんな活動をSNSで発信し続けていたら、とある研究機関に勤める友人から『どうせやるなら、大阪湾をきれいしないか』と声をかけられたんです」

森川さんも「生態系を保全するためには、藻場や干潟をつくればいいのではないか」と考えた。協力者を求めて構想を発信し続けていたら、人づてに紹介されたり自ら申し出てくれたりして、知識や技術をもった人が少しずつ集まってきて、しだいにプロジェクトの形になっていった。本格的やるんだったら個人より法人化して進めようと、3月31日に「一般社団法人国際オーシャンリハビリテーション協会」が発足する。

「法人化することで、組織をより発展することができます。将来的にさまざまな関連先との提携や協力を得て、国際的な事業へと展開させることができるようになるでしょう」

浄化するのは万博会場に近いエリア

「大阪湾をきれいにするというと、たいていの人は大阪湾全体をイメージされます。我々がやろうとしているのは、万博会場となる夢洲周辺の北港地域、数キロ四方を想定しています」

具体的にどのような方法を用いるのか、構想がいくつか練られている。

▽〔1〕藻場をつくる

藻場は「海のゆりかご」ともいわれ、浅海域に生息する生物にとってなくてはならない。大阪湾では、ほぼ壊滅状態にある。

「まずは藻場を再生して、魚類の生育環境を淀川の河口域につくります。『造成ブロック』を沈めて、その上に海草が根を張ることができる『養生促進板』という素材を入れる計画です」

▽〔2〕干潟をつくる

干潟は陸域から流れてくる有機物や栄養塩が集まる場所で、貝や甲殻類が生息し、微生物による有機分解が行われるほか魚や鳥のエサ場にもなる。

「もともと大阪湾にあった干潟のほとんどが消失しているので、これも再生します」

いうのは簡単だが、実際にはかなりの「かさ上げ」が必要だ。大阪湾では、海面からせいぜい5メートルくらいまでしか、日光が届かないからだ。

その基礎材として「アスファルトコンクリート塊」や「コンクリート塊」という建設副産物を活用し、その表面に海草が根を張れる被覆材を設置する。

▽〔3〕シービンの設置

シービンとは「Sea=海/bin=ゴミ箱」という意味をもつ、海中を浮遊するマイクロプラスチックやオイル、その他有毒物質を海水ごと吸い込んで分別回収する装置だ。これは電源が必要なので、北港ヨットハーバーに設置をお願いする計画になっている。

また、使い捨てカイロを再利用してつくられた、水質を浄化する効果のある「Go Green Cube」を投入してヘドロを固め、きれいになった海に海草を生育させる構想もある。

「この手法はロンドン条約の取り決めに従って、効果を確認したらCubeを回収するか、あるいは条約違反にならない方法を検討中です」

その他、さまざまな機材、技術、施設を並行しながら、4年後を目途に、計画したエリアの浄化を目指す。

   ◇   ◇

今後のタイムテーブルはどうなっているのだろう。

「プロジェクトが動き始めたら、最初の1~2年は調査と研究です。海上に大規模な施設を設置する計画もあるので、地元の漁師さんたちの邪魔をしてはいけないし、こちらの趣旨をよく説明して理解を得ることも必要でしょう」

「名前はまだ出せない」とのことだが、新たにいくつもの企業が協力を申し出ており、その中には「TEAM EXPO 2025プログラム 共創パートナー」に登録している企業や団体もある。

また2025年をひとつの目標にしつつも、そこで終わりではないと森川さんはいう。

「大阪湾をきれいにするのは、あくまでファーストステップです。最終的には地球規模の活動に発展させていきたいと考えています」

   ◇   ◇

▽オーシャン・リハビリテーション・プロジェクト Facebook
https://www.facebook.com/oceanrehabilitationproject

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