「鉄道大国 日本」と称せられるだけあって、国内には数多くの鉄道路線があります。しかし地下鉄、急こう配、一般道路を走るトライアスロンのような路線は京阪京津線しかないでしょう。鉄道ネタでは外せない京阪京津線の魅力と現状を紹介します。
京都と滋賀を結ぶトライアスロン路線
京阪京津線は御陵(みささぎ・京都市山科区)~びわ湖浜大津(滋賀県大津市)間を結ぶ全長7.5キロの路線です。御陵で京都市営地下鉄東西線へ入り、太秦天神川まで乗り入れます。京阪電車は京都市営地下鉄に乗り入れますが、京都市営地下鉄の電車は京津線には乗り入れません。日中時間帯、京津線はおおむね20分間隔で運行されています。
現在の形態になったのは京都市営地下鉄東西線の開業に伴い、御陵~三条間が廃止になった1997(平成9)年のとき。かつて京津線は路面電車として三条駅から三条通を走り、車をかき分けながら進んでいました。筆者は部分廃止前の御陵~三条間に乗車しましたが、渋滞により思うように電車が走れなかったことを覚えています。
さて先述したとおり京津線の電車は地下鉄東西線に乗り入れます。京津線の始発駅である御陵駅も立派な地下駅です。なお地下鉄山科駅と京阪山科駅はまったく別の駅となり、地下鉄山科までの切符で京阪山科まで乗車すると差額運賃が発生するのでご注意ください。
京阪山科付近から地上に上がり、今度は地下鉄路線から山岳路線に様変わり。京津線は京都府と滋賀県の県境付近にある逢坂山の峠を越えます。そのため急こう配と急カーブのオンパレード。特に大谷~上栄町間は61パーミル(水平距離1000mで垂直距離61m)もあり、車内でもこう配を感じます。写真の大谷駅は40パーミルの傾斜上にある駅。先ほどまで地下鉄線内を走っていたとは思えません。
峠を越え電車から「やれやれ」とため息が聞こえてきたと思いきや、上栄町~浜大津間で待ち受けるのは一般道路。今度は車に気を使いながら進まなくてはなりません。日本各地に路面電車はありますが、4両編成の一般電車が堂々と道路を走る姿はここだけです。
道路を走り切ると、終着駅のびわ湖浜大津駅に到着。同駅で石山坂本線(坂本~石山寺)に接続します。京阪では京津線と石山坂本線をセットにして「大津線」といいます。
いろいろ工夫しながら前へ進む
残念ながら大津線は輸送人員の減少により赤字が続いています。地下鉄東西線への乗り入れに伴う運賃の値上げやJR線との競争により、部分廃止した1997年よりも厳しい状態となっています。一時は京阪から分社化することにより収支改善を試みることも検討されましたが、現在は京阪電気鉄道の枠内で収支の改善に取り組んでいます。
合理化も進めていますが、様々な「攻め」の姿勢も見られます。2018年には観光客にとってわかりやすい駅名にするために、びわ湖浜大津駅(浜大津駅からの改名)など大津線4駅の駅名が変更されました。
また2020年9月には戦前に京阪本線~大津線間を結んだ専用列車「びわこ号」の塗装を再現した電車が登場しています。これからも大津線が繰り出す「工夫」に期待したいところです。
大津線はびわ湖クルーズ船(びわ湖浜大津駅下車)など観光資源にも恵まれています。休日に京都から乗り鉄してはいかがでしょうか。