ごみ箱に捨てられた大量の空き缶や、束ねた新聞が美術館の作品!?…これが陶芸で?リアルな再現に驚き

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 ビールやジュースの缶の入ったごみ箱、積み重ねられた日本語や英語の新聞、床に伏せられた雑誌。一見、本物に見えますが、実は全て陶器でできた作品なんです。しかも作者は1932年生まれの大ベテラン。思わず驚きの声をあげそうになる、そんなベテラン美術家の作品展が注目を集めています。

 これらの作品が展示されているのは京都市左京区の京都国立近代美術館です。作家は三島喜美代さんで、1970年代初頭までは油彩に取り組んでいました。

 その後、陶芸に没頭するようになった三島さん。近年は、缶や古新聞などの捨てられるものを、手間とお金をかけて精緻な陶器に再現することに力を注いでいます。

 京都国立近代美術館の会場には、8点の作品が展示されています。古新聞を束ねたような作品は、実際の紙面をシルクスクリーンという版画の技法で転写しています。新聞の質感や重なった様子、丸まった形態などは本物そっくりです。

 漫画雑誌の作品群は、表紙も丹念に作られています。ページを開きつつ床に伏せて置いた状態や、風でページが開く様子がしっかり再現されていてびっくりします。

 ごみ箱に捨てられた空き缶は、1本ずつが細密に再現されています。表面のデザインや缶の内部まで実物そのもの。スーパーマーケットのチラシをイメージした作品は、まるでだれかが床にまいたよう。陶器なのに紙のような薄さに驚かされます。ごみ箱に捨てられたように見える段ボール箱は、目をこらすと陶器独特のざらざら感が見え、土の風合いがうかがえます。

 8点はすべて京都国立近代美術館の所蔵作品ですが、それとは別に三島さんの所有する3点も陳列されています。事前に手指の消毒をすると触らせてもらえるので、陶器独特の手触りを確かめられます。

 大長智広研究員は「壊れるかもしれないという危うさを確認しながら、作家の人物像をぼんやりとでも想像してほしい」と話しています。

 三島さんの作品は中京区河原町通二条下ルのギャラリー艸居(そうきょ)アネックスでも11点展示されています。

 入り口付近には、「高知」と書かれたキュウリの段ボール箱に入っている古新聞が置かれています。もちろん、箱も新聞もすべて陶器です。「ワレモノ」「われもの注意」「取扱注意」と書かれたタグ陶製。ほかには、十数枚の外れ馬券を幾何学模様に貼り合わせた平面作品もあります。ごみ箱に入った空き缶の作品も見ることができます。

 京都国立近代美術館の展示は3月7日まで(月曜休み)で、艸居アネックスは2月27日まで(日、月曜休み)です。

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