東京五輪の延期に伴って移動された今年の祝日を反映できていないカレンダーが多く出回り、生活や企業活動への影響が懸念されている。祝日を移動させる特別措置法の改正が昨年11月にずれ込み、多くのカレンダーが元の休日のまま印刷を終えていたためだ。祝日と平日を間違って予定を立ててしまったり、企業のシステムが正常に動かなくなったりする恐れがあり、注意が求められている。
今年の祝日は、本来7月19日だった「海の日」が五輪開会式前日の7月22日に、10月11日だった「スポーツの日」が開会式の7月23日に移動している。8月8日の閉会式は11日の「山の日」を前倒しした。移動前の祝日は平日になる。
祝日の移動は、開・閉会式の混雑回避が目的で、2021年だけの特例。根拠となる改正五輪特措法が昨年11月27日に可決、成立したが、年の瀬が迫っていたため移動前の祝日を掲載したままのカレンダーが多数発行されることになった。
京都府印刷工業組合(京都市右京区)によると、カレンダーは早ければ前年の夏ごろから印刷が始まり、昨年は組合役員の間でも祝日の対応が話題になったという。最終的には「法改正で祝日が変更になることがある」と書き加えるなど、印刷時点の状況を踏まえて個別に対応が行われたという。
一方で、京都府京田辺市の都市緑化協会が10月に発行したカレンダーのように、昨年5月の改正法案の閣議決定を受けて移動後の祝日を反映した物もある。ただ京都新聞社が確認したカレンダーや手帳など25種類のうち、反映していたのは2種類にとどまった。
そんな中、京田辺市は2月の広報紙でカレンダーの祝日を書き換えるように呼び掛ける記事を掲載した。市民から注意喚起の要請があったといい、担当者は「私も移動を知らなかった。間違って予定を立ててしまわないように注意してほしい」としている。
情報セキュリティー企業のトレンドマイクロ(東京都)は、「休日にシステムの保守を行うことはよくある。祝日を間違えば、業務をしているのにシステムが休みの対応をしてしまうこともありうる」と警戒を求めている。
例えば、勤怠管理システムが休みと判断して出勤を記録できなくなったり、営業中にもかかわらずかかってきた電話に休日用の自動応答が流れてしまったりするトラブルも考えられると指摘。大手サイトで19年12月23日に株価が表示されなくなった問題も、天皇陛下の即位で平日になった元の天皇誕生日をシステム上では祝日のままにしていたことが原因だったという。
同社は「前例もある。システムの管理者には正しいカレンダーを入力してもらい、1年限りの変更なので元に戻す作業も忘れないようにしておくことが必要だ」と点検を勧めている。
五輪に伴う祝日の移動は20年も行われたが、特措法の改正は開会式予定日の2年以上前となる18年6月で、カレンダーへの影響はなかった。