医療逼迫、豊田真由子が考える「できること・すべきこと・すべきでないこと」

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

解決策は?

・「補助金の投入による経営状況の改善」
コロナ病床には、重症者向け一床当たり最大1950万円(感染状況等により異なる)の補助が出るようになり、医療従事者の処遇改善等に充てられるようにとのことなのですが、もちろん補助が無いよりはあった方がよいわけですが、お金だけですべて解決できる問題ではないと思います。

・「新型コロナ受け入れ病院・病棟を集約」
感染症を扱いますので、できるだけリスクは広く拡散しない方がよい、院内や人員の感染症対策を徹底することが必要であること、他の疾病の患者さんの治療も必要であること等も踏まえれば、多くの病院で少しずつ受け入れるよりも、限定した病院で、まとまった数の患者さんを受け入れる方が、リスク対策や人的資金的資源の効率的投入の面からは、効率的・効果的である、ということになります。

空施設の利用や工事でコロナ専門の病院・病棟を作り、集約をする、あるいは、現在新型コロナ患者を受け入れている病院の他の疾病の患者さんを他の病院に転院していただいて、新型コロナ専門病院・病棟とすること等が有用であると思います。

・「広域的な調整」
現在、新型コロナ患者の入院先については、主に自治体・保健所の方が、地域内での病床を探して、個別に電話連絡などで奔走しておられます。枠を超えた連携は、制度的にも難しいのが現状です。もし、広域自治体や国レベルで、広く状況を把握でき、新型コロナ患者の多い地域から少ない地域の病院への転院などを調整するシステム・機能が構築されれば、医療逼迫の状況は、少し改善されるのではないでしょうか。

・「受け入れを勧告し、拒否したら病院名を公表」
政府では、感染症法を改正し、行政が病院に新型コロナ患者の受け入れを勧告できるようにするか、検討が行われています。現行の感染症法(16条の2)では、厚生労働大臣や知事は、感染拡大防止のため必要な措置について、医師や医療関係者に「協力」を求めることができるとされていますが、改正案では、要請を「勧告」に強化し、さらに、患者の受け入れ勧告に応じなかった場合は医療機関名などを公表できるようにし、実効性を持たせてはどうか、とのことです。

私は、上記で述べてきた理由により、この方針については、本来慎重であるべきではないかと思いますが、「法的根拠があれば動きやすい」という声を、行政と病院双方からも聞きますので、病院サイドも了承の上でまとまり、うまく機能していくのであればよいだろうと思います。

・「風評被害や差別をしない」
これは、誰もが今すぐできる、とても大切なことです。院内クラスターが発生して評判が下がる、患者が来なくなる、新型コロナを受け入れている病院の職員やご家族が差別を受ける、こんなことが蔓延するのを目の当たりにすれば、当然、病院は新型コロナ患者の受け入れに消極的になります。そのことで、国民の生命が危険に晒されるのです。

「医療従事者の皆さんに感謝」を、表層的にではなく、それぞれの方が抱える苦難に真に思いを馳せ、できること・すべきこと・すべきでないことを真摯に考えていく。生命を救い、感染拡大を防いでいくのは、私たち一人ひとりの行動です。

(参考)
・OECD Health Data 2020
https://stats.oecd.org/Index.aspx?QueryId=30183

・「新型コロナウイルス感染症を踏まえた地域医療構想の考え方について」(厚労省「地域医療構想に関するワーキンググループ」(2020年10月21日))
https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000684860.pdf

・「COVID-19 による脳卒中救急医療への影響について2020 年 12 月の現状調査に基づく声明」(一般社団法人日本脳卒中学会)
https://www.jsts.gr.jp/news/pdf/20210105_covid.pdf

・「令和2年度新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金に関するQ&A(令和 3 年1月 7 日 第2版)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000716483.pdf

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