医者任せにしてはいけない、新型コロナを終息させるために国民がすべきこと 神戸大・岩田教授に聞く

渡辺 陽 渡辺 陽

日本では依然として新型コロナ終息の目途は立っていません。一日も早い新型コロナ終息のために、私たちにできることはあるのでしょうか。新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に実際に乗船。その内部の状況と対策について、YouTube上で赤裸々に語った神戸大学医学部感染症内科の岩田健太郎教授に伺いました。

体調を崩したら「休む」という選択

――新型コロナ終息のために、社会や個人の習慣を変える必要があると説かれていますが。

岩田健太郎教授(以下、岩田) 新型コロナ対策は、何よりも蔓延させないことが大事です。ウイルスだけに注目するのではなく、人々は個人や社会の「ふるまい」について考える必要があります。

和歌山県の済生会有田病院で、50代の男性医師が、熱があったにも関わらず診療行為を続けて感染が広まりました。これは特殊な事例ではなく、ありがちなことだと言っていいでしょう。日本人は勤勉なので、少しくらい熱があるから、少し咳やのどの痛みがあるからといって仕事や学校を休まない。頑張ってしまうのです。勤務先も、「それくらいのことで休むのか」と容認しない風潮があります。しかし、新型コロナを蔓延させないためには、軽症だからといってあなどらないで、休暇を取って家にいたほうがいいのです。

新型コロナは最初から高熱が出るとは限らず、軽症のことが多いのです。たかが風邪だと思っても外出せず、症状がなくなるまで家にいましょう。会社や学校など、社会もそれを許容するよう考え方を変えなければいけません。

死亡率を上げない

――新型コロナは、軽症のことが多く、死亡率も比較的低いそうですが、恐れる必要はあるのでしょうか。

岩田 クルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号では、早期に適切な対策を講じなかったため、あっという間に感染が広まりました。感染者が爆発的に増えると、重症者や死亡する人もうなぎ上りに増えて、死亡率が上がります。それが新型コロナの大変なところなんです。死亡率は低いまま食い止めなければなりません。そうでないと、いつまでも終息しないのです。

テレワークの導入やイベントを中止するなどの対策を講じる必要があります。人が集まらねばならない会議は最小化し、連絡事項はメールやチャットでやり取りします。記者会見も昼間にチャットでやればいいのです。

感染しない、させないために適切な判断、対応をする

――マスクの無駄遣いをしないということも、感染の拡大を防ぐために必要なのですね。

岩田 マスクは、必要な人に行き渡るようにしなければなりません。

――本当にマスクが必要な人とは?

岩田 飛沫曝露のリスクが高い医療従事者はマスクをする必要があります。また、咳やくしゃみなどの症状がある人もマスクをつけ、感染拡大を防ぎます。普通の生活では、予防的なマスクは不要です。また、マスク以上に、症状がある人は「外出しない」ことが大事です。必ずしも病院に行く必要はありません。症状があってもしんどくなければ、家で安静にしていましょう。しんどい人は、マスクをつけて速やかに病院に行きましょう。「しんどい」の感じ方には個人差があるので、それぞれ判断してください。

――他に気を付けることはありますか。

岩田 自宅に家族や同居人がいる人は、病気の人はマスクをつけて、何かに触るたびに何度でも手指を消毒してください。ウイルスを触った手で口や鼻、目を触ると感染リスクが高まるからです。

◆岩田健太郎(いわた・けんたろう) 島根県生まれ。1997年島根医科大学卒業。2004~09年亀田総合病院(千葉県)。08年から神戸大学大学院医学系研究科・医学部微生物感染症学講座感染治療学分野教授、神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野教授。米国内科専門医など。著書に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』(朝日新聞出版)ほか。

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