復活した250cc四気筒バイク、カワサキNinja ZX-25Rがいま好調に売れています

小嶋 あきら 小嶋 あきら

バイクブームの時代に生まれた究極のエンジン・250cc四気筒

 1980年代の半ば、空前のバイクブームと呼ばれる時代。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国産四大バイクメーカーは、それぞれ最新の技術を投入して激しい開発競争をしていました。

 特に軽二輪と呼ばれる250ccクラスは、車検制度がないために維持費が安く、しかも高速道路に乗れるということで人気でしたので、各メーカーがしのぎを削っていました。

 1980年代前半、ヤマハのRZ250という高性能バイクが大人気でした。35馬力というハイパワーな2サイクルエンジンを搭載していたのです。それに対してホンダが1982年、VT250という4サイクルエンジンのバイクで同じ35馬力を達成し、これがまた大ヒットになりました。

 2サイクルエンジンと比べると、4サイクルエンジンは同じ回転数で爆発回数が半分になるので、基本的に馬力の面では不利です。馬力というのは回転の強さ×回転数で決まりますから、どうしても回転数を高くして馬力を稼ぐ必要があります。高回転まで回すためには気筒数を多くする、つまり単気筒より二気筒、二気筒より四気筒の方が有利です。ただし気筒数が増えるとその分一気筒当たりの容積が小さくなり、エンジンの構造も複雑になるので効率が悪くなるというデメリットがあります。なのでそれまで「250ccでは小さすぎて四気筒は難しいし、意味がない」と言われていました。

 そんななか、1983年にスズキから250cc四気筒のGS250FWが発売されます。ただこのバイクはデータ上では36馬力とRZやVTを上回っていましたが、エンジンの特性は穏やかで、車体も大柄で重かったのでいわゆるスポーティなバイクではありませんでした。

各メーカーが競って改良、やがて250ccの頂点に、そして規制の波に

 しかしやはり「世界初の量産250cc水冷四気筒」のインパクトは大きく、1985年にはヤマハもFZ250フェーザーを発売します。スズキが2バルブだったのに対しこちらは4バルブに進化しました。そしてこれはまさに回転で馬力を稼ぐ考え方のエンジンで、14,500回転という超高回転で45馬力を発生しました。

 なお、この45馬力という数値は国内メーカーの250ccの自主規制値とされ、この後のスポーツバイクの馬力はみんな横並びの45馬力になっていきます。

 フェーザーに続いて、4サイクルを得意としたホンダもCBR250Fを発売、以降この250cc四気筒というカテゴリーは各メーカーの激戦区になりました。

 1990年代に入るとバイクブームがやや落ち着きを見せます。また、行きすぎた高性能競争の反省もあったのか、1992年には250ccの馬力規制値が40馬力に引き下げられます。そして2007年、排ガス規制の強化を機に、各メーカーとも250cc四気筒から撤退します。おそらくこの厳しい排ガス規制に適合させるのが難しく、またもともとコストの掛かる高度なエンジンだったこと、くわえてもはやここまで突き詰めて馬力を求める必要性も薄くなったなどの理由からでしょう。

消滅から13年、ついにカワサキから四気筒が復活

 以降十年以上の間、四気筒の250ccバイクは作られることがなく、もはや失われた技術などと言われてきました。そんな中でもスポーティなバイクを模索するホンダは二気筒のCBR250RRで38馬力(2020年にマイナーチェンジして41馬力)のパワーを出しましたが、数値上ではかつての四気筒に及びませんでした。

 そこに2020年、突如としてカワサキが発売したのがNinja ZX-25Rです。実に13年ぶりに登場した国産250cc四気筒エンジンは、15,500回転でかつての馬力規制上限値と同じ45馬力を発生します。

 果たして250ccのバイクに45馬力という出力が本当に必要なのかとか、そういう議論もあるかとは思います。しかし2007年の排ガス規制から13年、ついに250ccバイクのスペックが規制前に、さらにバイクブーム絶頂期の時代に並んだ、ということはバイク好きにとって決して意味のないことではないでしょう。

 また、今の時代に敢えて250cc四気筒を開発したカワサキの男気のようなものもファンにとっては嬉しいことなのではないでしょうか。

 Ninja ZX-25Rは2020年9月10日に発売、当初は2021年3月末までに5000台の販売を目標にしていたところ、年末までにそれを上回る予約があり、現在バックオーダーの状態だといいます。

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