さようなら"京都の珍風景" 鴨川の巨大ショートケーキ、8年半の歴史に幕「寂しいけど、思い出は残り続ける」

京都新聞社 京都新聞社
鴨川デルタに登場する最後の日に、ショートケーキのオブジェと記念撮影するファンら(11月22日、京都市左京区)=Granewton提供
鴨川デルタに登場する最後の日に、ショートケーキのオブジェと記念撮影するファンら(11月22日、京都市左京区)=Granewton提供

 京都市左京区の高野川と賀茂川が合流する通称「鴨川デルタ」で、毎月22日に巨大なショートケーキの造形作品が出現するイベントが11月に幕を閉じた。京都の珍風景として8年半、登場回数は102回を数え、ケーキの近くでは初対面の人たちがピクニックを楽しんできた。主催者の女性は「ケーキを通してたくさんの出会いが生まれた」と感慨深く語る。

 イベントが始まったのは2012年5月。グラフィックデザイナー重光亜沙美さん(31)=左京区=らでつくる芸術家グループ「Granewton(グラニュートン)」が、カップルや家族連れの憩いの場に笑顔を添えようと企画した。ケーキは高さ1メートル、幅2メートル、奥行き1メートルで、重光さんが12年に京都精華大の卒業制作として手掛けた。

 菓子や飲み物を用意し、ケーキの近くでピクニックイベントを催してきた。会員制交流サイト(SNS)で話題を呼び、多くの若者が集まる場に。学生バンドがライブをしたり、クリスマスに聖歌隊が賛美歌を歌ったりしてきた。子どもたちがケーキをたたいたり蹴ったりして破損することもあったが、重光さんは「その都度修理して、大事に使ってきた」と振り返る。

 雨の日も風の日も、ケーキは毎月22日にデルタに現れた。今年9月に目標だった100回目を迎え、重光さんらはイベントを終えることに決めた。

 最終日の11月22日にも多くのファンが駆け付け、記念撮影をしてケーキの思い出を語り合った。学生時代から通い続けた会社員の川嶋瑛莉さん(29)=富山市=は「ケーキの横に座れば初対面でも仲間のような気持ちになり、のんびり過ごす空間が幸せだった。寂しいけど、思い出は残り続ける」としんみり。

 重光さんはイベントを通じて国内外に交友関係が広がったといい「ケーキがなければ今の自分はなかった。これからもケーキを生かした企画に挑戦できれば」と意気込む。

 巨大ケーキは1月8日まで出町桝形商店街(京都市上京区)にある古書店「エルカミノ」店頭で展示している。

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