山の三角点ってそもそも何? 標高とは別物「明治から生き続けている」

京都新聞社 京都新聞社
地蔵山の山頂に埋設されている一等三角点の標石(手前)=京都市右京区
地蔵山の山頂に埋設されている一等三角点の標石(手前)=京都市右京区

 京都新聞の連載で「地蔵山」(京都市右京区)を「京都府内一高い一等三角点」と紹介したところ、「一番高い山ではないのでは」「一等と二等の違いは何か」といった質問が読者から寄せられた。三角点は標高ではなく、地図作成のために位置を示す基準で、明治時代に選定されたものが今も利用されている。

 地蔵山は、愛宕参りで有名な京都市右京区の愛宕山の北方にあり、標高は947メートル。宇治市の男性(80)は「地蔵山は府内で一番高い山ではないのか。一等三角点とは」と疑問を手紙で寄せた。

 府内で一番高い山は、京都市左京区北部にある標高971メートルの皆子山だ。地蔵山は「一等三角点がある山」としては府内で一番高い。つまり、標高と一等三角点は別だ。

 「三角点は高さではなく位置(経緯度)を示すもの。一等三角点は地図作成のために明治時代に設置されたものです」。三角点の研究をし、現地踏査を重ねている「一等三角点研究会」の大槻雅弘会長(78)=京都市西京区=が教えてくれた。

 三角点は国が地形図を作成する際に選び、経度や緯度の基準になる。現地には花こう岩でできた標石が埋められている。最初に設置されたのが一等三角点で、他の2点と結んで三角測量を行った。三角の一辺は約45キロ。なお、二等は8~10キロ、三等は3~4キロ、四等は1・5~2キロとなっている。

 三角点には「点名」がある。設置された年月日や所在地、経過をまとめた記録を「点の記」という。例えば、地蔵山の一等三角点は1886(明治19)年8月8日、陸軍六等技手によって埋標されたと書かれている。

 点名は山名と一致するとは限らない。大津市のびわ湖バレイに隣接した蓬莱(ほうらい)山(標高1173メートル)にある一等三角点は「比良ケ岳」となっている。

 三角点は見晴らしの良い場所に設置されるが、必ずしも山頂にある訳ではない。登山道のない場所や無人島に置かれたものもある。

 一等三角点研究会は7年前、「一等三角点全国ガイド」をまとめた。その時点では未踏で収録できなかった2点のうち一つが鹿児島県の無人島・臥蛇島(がじゃじま)。大槻さんは2年前、船をチャーターして上陸し、地形図を頼りに斜面のやぶをかき分け、標石を見つけた。

 「一等三角点がなければ地形図はできなかった。明治時代に選定された場所が今なお生き続けている。どんな所にあるのか訪ね歩くのも登山の魅力です」と話す。

<メモ>

 一等三角点は全国に974カ所ある。京都府内には七つで、標高が高い順に(1)地蔵山(947メートル)、(2)長老ケ岳(916メートル)、(3)太鼓山(683メートル)、(4)鷲峰山(681メートル)、(5)磯砂山(660メートル)、(6)多弥寺山(556メートル)、(7)烏ケ岳(536メートル)。日本で一番標高が高い一等三角点は、南アルプスの赤石岳(標高3120メートル)にある。

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