埼玉で猫50匹の多頭飼育崩壊…飼い主が入院、動物保護団体が猫をレスキュー 里親募集へ

渡辺 晴子 渡辺 晴子

埼玉県狭山市の住宅で今月、約50匹の猫が放置されていることが、狭山市の動物保護団体「さやま猫の会」への取材で分かりました。飼い主が入院したため、飼育ができなくなったといいます。現場は飼っていた動物が増えすぎて適正に飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」が起きていたとみられ、現在「さやま猫の会」は、埼玉県動物指導センターや狭山市などと連携して猫たちのレスキューを実施。避妊手術やワクチン接種など医療処置を施した猫たちの里親募集も呼び掛けています。

5年前から糞尿など悪臭の苦情が寄せられていた 11月中旬から猫のレスキュー開始

「さやま猫の会」によると、入院した飼い主が住む家は5年ほど前から、猫が増えて糞尿が原因で近隣から悪臭の苦情が寄せられていました。そのため、県動物指導センターから糞尿の処理などを適切にするよう指導。また、同会からも雌猫の不妊手術などをお願いしていたといいます。

 今回、9月末に飼い主が体調不良で入院したと、社会福祉協議会を通じて同会に知らされ、多数の猫が放置されていることが分かりました。しかし、その家の所有者が別におり、ようやく連絡がついたのが11月中旬だったとのこと。すぐに、県動物指導センターや市などが家の中に入り現場を確認して、猫たちのレスキューが始まったといいます。

多頭崩壊現場には糞尿の山と猫の死骸も レスキュー後に生まれた赤ちゃん猫が亡くなる

「多頭飼育崩壊」が起きたのは、飼い主が捨てられた猫を拾い集めてきて、避妊手術などをしないまま飼育を続けた結果、増えすぎたとみられています。現場には約50匹の猫が残されたまま、糞尿の山とともに猫の死骸などもあったそうです。同会は、数匹分の死骸をペット霊園に届け、猫をこれ以上増やさないようにと、まずは雌猫から順次レスキュー。不妊手術やワクチン接種、ウィルス検査などを行って里親探しに取り組んでいます。

また、レスキューした猫の中には、1匹の赤ちゃん猫を出産した母猫がいました。生まれて数時間ほどで息を引き取ったそうです。赤ちゃん猫は56グラムの未熟児でした。

子猫が育たない環境 赤ちゃん猫が捕食されることも…

多頭飼育崩壊の現場のほとんどが、子猫が育たない環境だという「さやま猫の会」の代表は「多頭崩壊現場の場合、近親交配を繰り返すことから弱い子猫が多かったり、赤ちゃん猫は捕食されてしまったりすることが多々あります。今回の現場も、子猫はいませんでした。4LDKの部屋でほぼ荷物もなく生活されていたようで…生まれても赤ちゃん猫が隠れるところがなかったため、他の猫に食べられたのではないかと推測されます。赤ちゃん猫を亡くしたお母さん猫たちの悲しみを想像すると、胸がつぶれる思いです」と話します。

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保護団体・飼い主が不在で公表へ「猫の里親を見つけたい」 

「さやま猫の会」では毎年3件ほど、このような多頭崩壊の現場を対応しており、これまでの案件については公表せずに活動をしていたといいます。

「現場を見ると毎回やりきれない思いをしていますが、飼い主さんのプライバシーなどの問題を考慮して公表はしていませんでした。いずれの案件も飼い主さんは健在で、地道に不妊手術などをしながら譲渡につなげることができたからです。これまでの案件は公表しなくても一定水準の頭数に引き下げられ、多頭崩壊を食い止めることができたのですが…」と代表。「今回は飼い主さんが不在で、退院の見込みも立たないため、猶予がありません。やむなく公表して、行く場のない猫たちの里親を見つけるためにも、皆さんのお力をお借りせざるをえない事態となりました」と公表するに至った経緯を説明します。

さらに、案件にかかる飼育費、医療費など費用については「家の所有者の方と交渉し、終息するまでできる限り継続負担をお願いしてありますが…ただ、かかる費用が高額になることも予想され、万が一不足した場合は当会の持ち出しも検討中です。できるかぎり支援金だけは募ることはせずに、解決までたどり着きたいと思っています」。

実際、多頭崩壊案件の公開とともに事態を聞きつけた人からは物資支援などが届いているそうです。

ボランティア任せではなく…県動物指導センターなど行政も譲渡に協力へ

現在、「さやま猫の会」は懸命に猫のレスキューを行っているところですが、県動物指導センターなど行政も譲渡に協力する予定だといいます。同会の代表は「これまで多頭崩壊が起きた場合、レスキューから譲渡まで行政は対応せずボランティア任せなところがありました。最近は、保護を任せられたボランティアのところに留まったまま猫や犬があふれ、疲弊しているなどと耳にします。猫たちを里親に出すまで、行政に協力していただけるようになればボランティアはとても助かります。今回は特に緊急事態だったこともあり、当会からも『里親まで一緒にできませんか』と行政側にお願いしました。センターの方々も里親募集をしていただけるとのことで大変ありがたいです」と話しています。

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同会の譲渡会は毎週日曜日12時から14時まで、埼玉県狭山市智光山公園内釣堀、前山の池前で開催中です。また、保護した猫のうち数匹については、中川浩県議が事務所2階を一時保護場所として提供しており、こちらでも里親を募集しているとのことです(近隣の方を希望とのこと)。

このほかレスキューした猫を一時的に保護していただける方や保護スペース、空き店舗などを貸していただける方、猫の引き取りをご協力していただけるボランティア団体・個人の方(不妊化及び医療処置はさやま猫の会が全額負担)なども募集しています。

問い合わせは、さやま猫の会・Eメール「sayamanekonokai@gmail.com」まで。

 ■さやま猫の会のTwitter:「さやま猫の会」(@sayamaneko)
https://twitter.com/sayamaneko

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