「一般の動物病院でももっと保護猫の不妊去勢手術をしてほしい」と、猫の不妊手術専門のクリニック「ハッピータビークリニック」を運営する橋本恵莉子獣医師は訴えます。なぜ保護猫の不妊去勢手術が必要なのか、話を聞きました。
これ以上助けられない!猫ボランティアの悲痛な叫び
――なぜ野良猫が増えてしまうのでしょうか。
橋本恵莉子獣医師(以下、橋本獣医師)「野良猫に不妊去勢手術を受けさせないままエサを与える人がいます。不妊手術をしていないと、たくさんの子猫が産まれてしまいます。エサを与える人は、『野良だから仕方ない』などと言い訳をしますが、それでは不幸な野良猫が増えるばかりです。
野良猫を発見した人が、かわいそうだと思って猫を保護しても、自分で飼う、あるいはシェルターで保護できる猫の数には限界があります。むやみにエサを与える人だけでなく猫を捨てる人もいて、ボランティアさんは肉体的にも経済的にも追い詰められているという現状もあります。みんな助けてあげたい。でも、そんなことはできないのです」
野良猫だけではない、飼い猫にも不妊去勢手術を
――では、どうすれば保護が必要な猫を減らせるのでしょうか。
橋本獣医師「保護が必要な猫を減らすためには、まず蛇口を閉めなければなりません。不妊去勢手術をするしかありません。1匹の猫を保護するにも経費がかかるのですが、その費用で何匹もの猫の不妊手術を行えるのです。1組のオスメス猫の不妊手術をすることで、将来的には数えきれないくらいの不幸な猫が産まれるのを防げます」
――飼い猫の場合はどうでしょうか。
「飼い猫の不妊手術をしなかったばかりに子猫が産まれることもよくあります。家の中で飼っているから安心だと思わずに、飼い猫にも不妊去勢手術が必要だということを多くの人に知っていただけたらと思います」
一般の動物病院でも保護猫の不妊去勢手術をしてほしい
――不妊去勢手術をしてくれる動物病院や獣医師の数は足りているのでしょうか。
橋本獣医師「現在、1日に約20匹の不妊去勢手術をしています。それでも1カ月先まで予約が埋まっています。「もっと一般の動物病院でも保護猫や飼い猫の不妊手術を積極的にしてほしい、まずは獣医師の考え方を変える必要があるのです」
保護猫の不妊去勢手術を専門に行うスペイクリニックと言われる動物病院の数は限られています。飼い猫ではなく、ボランティアが自腹を切って手術を受けさせることが多いので、手術費用は一般の動物病院より安価に抑えられています。ハッピータビークリニックでは、オスが5,000円、メスが7,000円(税別)です。一般の動物病院でも、保護猫の不妊去勢手術を受けられたら、不幸な猫を減らすことができるのではないでしょうか。それは、やがては野良猫問題の解決にもつながるのです。
◆橋本恵莉子(はしもと・えりこ)「Happy Tabby Clinic(ハッピータビークリニック)」院長。大阪府立大学農学部獣医学科卒業。大阪ねこの会の一斉不妊手術に参加。保護猫シェルターにて感染症対策セミナー講演、松原市役所にて市民向け地域猫セミナー講演をするなど精力的に活動。