福井県に住む澤山さんは、職場のごみ捨て場で野良猫が産んだ子猫たちが保健所に連れて行かれるという話を聞いて居ても立っても居られなくなり、必死で捕獲した。子猫とはいうものの激しく抵抗されたので、澤山さんの手は血まみれになっていた。
職場のごみ捨て場で出産
2017年9月、福井県に住む澤山さんの職場の周辺に住みついている野良猫が、職場のゴミ捨て場の中で3匹の子猫を産んだ。1カ月半ほど様子を見ていたが、保健所へ連れて行くという話が出た。「この子たちが殺処分されるのかと思うといても立ってもいられず、里親さん探しをしました。知人の繋がりで1名の方が里親になってくださることになり、とても大人しい子が1匹いたので、首根っこを掴んで保護してその方に託しました」
残る2匹はまだ小さい体なのに凄まじい勢いで威嚇してきたので、飼い猫にはなれないかもしれないと不安になるほどだった。しかし1匹目の里親さんの友人が1匹もらってくれると言うので、その時、2匹とも保護することにしたという。
11月7日、澤山さんは、軍手を二重にはめてゴミ捨て場に入り、大声で悲鳴をあげるように鳴いて暴れる子猫たちに、何度も「ごめんね、ごめんね」と言いながら保護した。子猫たちの命を助けたい一心で、必死になって捕獲したが、保護して段ボールに入れたあとに自分の腕を見ると、子猫たちにひっかかれた深い傷で血まみれになっていた。しかし、何はともあれ保護できたという安堵で痛みもあまり感じず、そのまま動物病院へ2匹を連れて行ったという。
激しい威嚇と運命の子
獣医師は、「こんなに激しく威嚇する子猫は今まで見たことない」と言い、診察にも一苦労していた。澤山さんは、子猫を捕まえる時、茶トラの子猫と目が合った。その子は、一番狂暴なので最後まで残っていた。とても怯えて威嚇してくるのだが、懸命に生きようとする姿が可愛らしく思えて、自分で飼おうと決めた。もう1匹の子猫は、獣医師に診せたその場で里親に託した。
澤山さんは、慢性腎不全で治療中の老猫を飼っていたので、新しい子を迎えるつもりは全くなかった。
「茶トラの子猫との出会いは運命、神様が私に与えてくれた最高に可愛いプレゼントです」
子猫を飼うことも茶トラを飼うことも何も決まってなかった頃から、「もし茶トラを飼うなら色が海鮮のうにのようだからうにという名前にしよう!」と家族で話していたことがあり、そのままうにという名前になった。
本当は臆病な甘えん坊
凄まじい威嚇で大暴れする子猫だったので、澤山さんは、「これは大変なことになった」と思った。獣医師にも、「この子を飼うなら相当の覚悟がいるし、何カ月も触ることすらできないかもしれないよ」と言われた。
うにちゃんを家に連れて帰ってゲージに入れ、澤山さんは、その日は寝ないでずっと話しかけた。何度も指をゲージに入れて話しかけ、ウェットのご飯を差し出すと、うにちゃんはニャンニャン鳴きながら食べた。次第に澤山さんに心を許したのか、威嚇しなくなり、朝方には膝の上に乗ってきた。ベッドに誘ってみるとよじ登ってきて、腕枕で寝た瞬間、澤山さんの目には涙がにじんだ。今思い出しても幸せな瞬間だったという。
先住猫は17のお姉ちゃんなので、うにちゃんの暴れん坊っぷりによく怒っているが、うにはお姉ちゃんが大好きなようで、ずっと後を追いかけたり見つめたりしている。最近は仲良く隣に座っていることもあるそうだ。
もともと外に遊びに行くことや旅行などが好きだった澤山さん。今では仕事が終わるとすぐに家に帰るという。
「仕事中もうにのことで頭がいっぱいです。家族もみんなうににメロメロで、毎日が幸せで仕方ないです」