姫路市の市街地から少し外れた山の上に、世界で最も美しい城とも称されるドイツのノイシュヴァンシュタイン城(を模した建造物)がある。何も知らずに先日訪れて、麓から見えるその威容と、周囲の風景との圧倒的なミスマッチ感に度肝を抜かれてしまった。なぜここにこんなものが? 誰が何のために? 中はどうなっているの? …頭の中を無数の「?」が飛び交うのを感じながら、実際に足を踏み入れてみると、これまた驚きの世界が広がっていたのだった。
城がある一帯は「太陽公園」というテーマパーク。姫路市の中心部から北西へ車で約30分のところにあり、広大な敷地はノイシュヴァンシュタイン城の実物の3分の2サイズという白鳥城を擁する「城のエリア」と、世界中の石の建築物を再現した「石のエリア」に分かれている。
コスプレイヤーにも人気「城のエリア」
山上にある城のエリアへは、麓のウェルカムハウスからモノレールで3分。異国情緒あふれる見事な外観を堪能できるだけでなく、なんと中にも普通に入ることができてしまう。
内部にはもちろん(?)玉座があるほか、なぜかくるみ割り人形のコレクション展示やトリックアートなども。どこでも自由に中世ヨーロッパ風の写真や動画を撮影できる上、無料で使える更衣室も完備されているため、ここ2年ほどはコスプレイヤーの間でも人気が上昇中。映画やドラマ、CMなどのロケ地として使われることも増えている。
目指すは「共生」 公園の誕生秘話
公園スタッフや公式サイトなどによると、太陽公園の原点は創始者である門口堅蔵氏(1927〜2015年)の「差別のない町を誕生させたい」との強い思いだという。門口氏は、全ての人が障害の有無に関わらず「共に生きる」ことを理想に掲げ、出身地の姫路で多くの福祉施設を運営してきた。
1992年、「旅行が難しい障害者に世界観光の気分を体験してもらいたい」とフランスの凱旋門や中国の天安門、万里の長城、エジプトのピラミッドなどのレプリカを展示したこの公園をオープン。2009年には白鳥城も完成し、唯一無二のテーマパークとして知られるようになったという。実際、白鳥城内には、両手の不自由な人たちが口や足で描いた絵を紹介しているコーナーなどもあり、共生の思いを随所に垣間見ることができる。
規格外のスケール「石のエリア」
一方、敷地面積約4万坪の石のエリアには、世界中にある石の文化遺跡が怒涛のスケールで集結。例えば兵馬俑坑では、本場中国の秦始皇兵馬俑博物館で作られたという兵馬俑のレプリカが1000体展示されており、その迫力で見る者を圧倒する。ここがどこなのかなんて、この際どうでもよろしい。園内を回っているうちに、そんな気持ちにさせられてしまう。
規格外の建造物が林立する太陽公園の敷地には、複数の社会福祉法人、福祉施設も併設。「旅行が難しい障害者に世界観光の気分を」のほか、「観光客や地域社会とのつながりを生む」「障害者に就労の場を確保する」の計3点を主な目的として運営されているという。
「誰も知らない公園」Twitterでは自虐も
見どころだらけの太陽公園、映画のロケもバンバン行われているのに、知名度がいまひとつなのが悩みの種。公式アカウントが1カ月ほど前、Twitterで「だ~れも知らない太陽公園」「どうやったら遊びにきてくれるのかなぁ」「ここにテーマパークがあるってどうやって知らせればいいのかなぁ」と哀愁漂う投稿をしたことで、一部で話題になった。
機会があれば、もうひとつの姫路(の)城にも足を延ばしてみては。