パンデミックで食料不安が悪化 →10歳男児の活動が地域の人々をサポート、「人道主義者賞」を受賞

今井 悠乃 今井 悠乃

 大統領選ばかり注目されていますが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、アメリカの失業率は統計開始以来、最悪の水準に達しています。従業員の解雇や一時解雇をせざるを得ない会社が増え続け、市民の食料不安もいまだ蔓延したままです。

 しかし世の中、捨てたものではありません。前例のない状況の中、地域コミュニティの助け合いの様子を、しばしば耳にするようになりました。エッセンシャルワーカーに食事を寄付するレストラン、パンデミックで学校が休校になり、給食が食べられない生徒たちに昼食を配る団体、低所得層が暮らすエリアや店先などの公共の場に続出する冷蔵庫「コミュニティ・フリッジ」など、各地で食料不安への対処がなされています。

 今回、登場してもらった米国中西部カンザス州ウィチタ在住の10歳の少年パクストン君も「パクストンのブレッシング(恩恵)ボックス」というフードシェアリングを設置し、コミュニティを手助けする立派な住民のひとりです。

 これは「不要な食べ物や寄付できる日用品がある人は箱へ置いて行き、それを必要とする人は誰でも無料で利用できる」という支え合いのシステム。パクストン君はこの活動が称賛され、8月にカンザス州の非営利団体より「人道主義者賞」を受賞しました。母親のマギーさんにお話をうかがいました。

―「パクストンのブレッシングボックス」はいつから始まりましたか?

 2016年にSNSでフードシェアリングのアイデアを見つけたので、パクストンに説明したところ「家の庭に箱を作りたい」と言い出したのがきっかけです。パクストンはまだ6歳でした。

―どのような食料品や日用品を寄付することができますか?最も必要とされているアイテムは?

 冷蔵する必要のないものですね。例えば、インスタントラーメン、スパゲッティ、シーチキン、お米、シリアル、ナッツ、ビーフジャーキー、ドライフルーツなど長持ちする食材の寄付がありがたいです。中でも水が最も必要とされているのには驚きました。クラッカーやシリアルバーなど個包装されている食材もすぐになくなります。

―パンデミック以来、どんな変化がありましたか?

 以前と比べて、かなり需要が増えただけでなく、家族連れの利用者が目立ちます。一時解雇や解雇されてしまった従業員も多いようです。パンデミックで不足しているトイレットペーパー、ゴミ袋や石けんなどはニーズが高いアイテムです。

―今後の活動の目標は?

 現在、管理している箱の数は80個。今後20個追加するので作業場の倉庫へ移動し、箱を作ったり、色を塗ったりしているところです。カンザス州だけでなく、全米の州にボックスを設置するのが目標です。

  ◇  ◇

 「パクストンのブレッシングボックス」ほど大がかりな活動はできなくても、近所の一人暮らしの高齢者を訪問したり、身近な人々を地域で支え合うことなら、私たちにもできそうですよね。

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