年末年始を旅先のホテルで過ごされる方も多いと思いますが、実はホテル業界が悩んでいるのが、宿泊客の方々による備品の持ち帰り問題。インバウンドを含めて多彩な人が宿泊するようになり、マナーの考え方も多様化。中には「どうしてこんなものを持って帰るの?」とホテル側が驚くケースもあるそうです。関係者に実情を聞きました。
そもそもホテルに宿泊して、持って帰っていいものは何なの?
…歯ブラシや小分けにされている使い切りのシャンプーやリンス、使い捨てのスリッパなどは、「消耗品」なので持ち帰りできますが、消耗品以外は原則的には持ち帰りができないようです。
「シャンプーやリンスでもディスペンサーにセットされているものはだめですが、インバウンドのお客様の中には持って帰られてしまう方もいますね。タオルもクリーニングをして使っているので、持ち帰りはできません」
「タオルの持ち帰りは昔から課題ですよね。旅館だと薄いタオルは持ち帰りができたりするので、それと同じだと考えておられるお客様もいらっしゃるようです」
「タオルは実はホテルのものではなく、契約をしているリネン業者のものなのです。ホテル側として客室清掃の際に枚数がそろっているかなど、細かく確認できているわけではありませんが、持ち帰りはご遠慮いただきたいです」
持ち帰られる品物はその時々の世相も反映…
…小さくて便利なものは、どうしても持ち帰られやすいようです。また、持ち帰られるものには世相も反映しているらしく、災害などが起きると、びっくりするものが急に持ち帰られるようになったりするみたいです。
「ドライヤーを持ち帰られることは多いですね。昔はこういう電化製品は部屋に固定されていたと思うのですが、そうしていないところでは、どうしてもよくなくなります。卓上の鏡も持ち帰られやすいですね」
「消耗品のように持ち帰られてしまう代表格といえば…携帯電話などの充電ができる『マルチアダプター』だと思います。故意なのか勘違いなのか分からないのですが、本当によく持ち帰られてしまうので、毎月いくつも購入していました。ホテルによっては部屋への備え付けはあきらめて、必要な方にフロントで貸し出すかたちに変更したところもあるそうです」
「北海道で大地震があったときは、部屋に備え付けの常備灯(懐中電灯)が大量になくなりました。常備灯は台座から引き抜くとすぐに点灯する仕組みで、本来は消すことはできません。消せない懐中電灯なんて、持ち帰ってどうされるのだろうと不思議に思っていたら、常備灯にスイッチを付ける方法を解説したYoutube動画があったらしくて…。一気に相当の数が持ち帰られてしまったので、調達するのも難しくて、本当に困りました」
でも…昔はもっと大変だったかも
…こんなにいろいろなものが持ち帰られている昨今。しかし思い起こせば、昔はもっと大変だったかもしれないね…という思い出話に。
「実は昔は持ち帰りはもっと多くて。90年代からバブルのころは本当に多かったですよね。2000年代に入って少なくなってきたというか…」
「昔はアクセサリーのトレイ、灰皿なども普通によく持って帰られていました。こういうものをなぜか『コレクション』しているような方がいらしたんですよね」
「観光バスで乗り付けた団体のお客様とかが一番大変で。なぜかテレビなど、とても大きなものを持って帰ろうとする方がいたりするんです。ですので、気になる団体のときは、お客様がチェックアウトしてバスに乗車されても、出発するのをしばらく待ってもらって。何かなくなっているものがないか、お部屋を総点検したりしていました。そして、テレビがない!となれば、急いでバスのトランクを開けて確かめさせてもらったり…いろいろありましたね」
…いやいや、ちょっと待ってください。そんなことを古きよき思い出のように語られても…。
「昔は目覚まし時計がベッドサイドのパネルに埋め込まれていたと思いますが、あれって盗難防止の目的もあったんです。最近は目覚まし時計を普通に置いている(置けている)部屋が増えてきましたものね」
「もっと昔、オイルショックのときはトイレットペーパーがばんばんなくなっていたと聞いたことがありますよ」
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持って帰ってはいけないものを宿泊客が持ち帰ってしまった場合は、ホテルから返却を求める連絡がくるそうですが、「手間を考えると、すべてのものに対して連絡ができているわけではありません…」とのこと。だからといって、持ち帰りがOKというわけではないですよ!
ルームウェアなど客室で提供しているものを販売をしているホテルもあるそうです。宿泊して、どうしてもお家に持って帰りたい『お気に入り』のものに出会ってしまったときは、ホテルのフロントに相談してみてもよいかもしれませんね。