いまや長距離の移動に欠かせない新幹線。そんな新幹線の高速走行を支える、地味だけどあまり知られていないお話をご紹介します。
ごく普通の電車(在来線と呼ばれますね)との違い、そもそも「新幹線」というカテゴリーはどう区別されているのかというと、「その主たる区間を列車が200キロメートル毎時(以降km/hと記す)以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と全国新幹線鉄道整備法の第2条に定義されています。
1964年に東海道新幹線が開通して以来、ながらくその最高速度は時速210キロメートルでした。そこに1992年3月14日、300系車両がデビュー、一気に時速270キロメートルまでスピードアップしたのです。
0系と呼ばれる開業当時の車両は一両当たり60トン近くありましたが、300系では45トンまで軽量化されるなど、技術的に大幅な改良が施されています。そしてそれと並行して改良されたものがあります。それは車両本体ではなく、設備の一部、架線です。
実は架線も地味に進化している
電車というのは架線からパンタグラフで電気を受けて走ります。架線…鉄道関係者や電気関係者は「がせん」と発音しますが、つまり線路の上に張ってある電線ですね。パンタグラフでこすりながら電車が走ると、架線は上下に揺さぶられます。例えばロープなど、端を持って上下に揺するとその揺れが波のように伝わりますよね。これと同じことが架線にも起こります。この波が伝わる速さよりも電車のスピードが速くなると、パンタグラフから線が離れてしまったり、また反対に激しくぶつかってしまったりします。
300系新幹線が時速270キロメートルで走ろうとすると、この波の速さに追いついてしまいそうになってしまいました。それを解決するために、架線を張る力、張力を大きくしたのです。
例えばギターの弦など、張る力を強くすると音が高くなりますよね。あれはつまり振動する速さが速くなるからで、それと同じ理由です。
時速210キロメートルの時は、この線を張る力は1トンくらいでした。いま、時速320キロメートルで走る東北新幹線などでは、ほぼ倍の約2トンほどの力で引っ張っているようです。
線を張る力を強くする。言葉で言うと簡単なようですが、そのためには例えば引っ張っても切れないように線そのものの材質や太さを見直したり、そもそもどれくらいの強さで引っ張ればいいのか計算したり、いろいろな研究がいまも続けられています。
縁の下の力持ち、という言葉がありますが、屋根の上にも人知れず新幹線を支えている技術があるのですね。