「この水槽ではその“性格”が原因で他の魚と一緒に入れられない魚を展示しています。みなさんには他の水槽と比べて少し寂しく見えるかもしれませんが、仕方ありません。性格が悪いんだから…」。一度読んだら、どんな魚なのか見たくなる。そんなユニークな説明パネルを数多くそろえた水族館が、日本海に面した京都府宮津市にある。その名もウオッチング(観察)に引っかけた「丹後魚っ知館」。日頃から間近で観察している飼育員ならではの視点が随所に盛り込まれ、来館者から「おもしろい」と好評を得ている。
冒頭の文章はモンガラカワハギの説明パネル。気性が荒く、見た目が似た魚とは時にどちらかが死ぬまで激しくけんかするという。うーん、そりゃ一緒の水槽に入れたらあかんわ。
これがハリセンボンの場合だと説明はこうなる。「漢字で書くと『針千本』と書きますが実際の針の数は350本ほどといわれています。かなりサバを読んでいますがそこはそっとしておきましょうか…」。ユーモアあふれる文面に、くすりと笑う来館者もいることだろう。
「うちは小さい水族館なので、できることは限られていますが、見せ方にはこだわっています」。飼育員の原口哲史さん(37)は、そう言葉に力を込める。図鑑の情報をそのまま書き写すことはせず、飼育員たちが日々世話をする中で気づいたことなど、「ここでしか見られないもの」を書くよう心掛けているという。
来館者とのやり取りから生まれたパネルもある。水槽にいる生き物たちの姿と名前を知ってもらおうと設置している「魚名パネル」は、生き物たちの名前を平仮名で表記してある。元々はカタカナでつづっていたが、「子ども向けに平仮名にしてほしい」という来館者の要望に応えた。
ハタ類の特徴を一覧にした「魚っ知館大水槽 ハタ類見分け図」も力作だ。原口さんが来館者に質問された際、すぐに答えられなかった苦い経験をきっかけに、勉強しがてら作り上げたという。
「飼育員の絵日記」と題したパネル展示では、飼育員たちの仕事ぶりのほか、マゼランペンギンやミズクラゲなどの生き物たちの生態、その性格などの豆知識をイラストと文で伝えている。
原口さんは「それぞれの飼育員が時間を見つけて新しいパネルを作っています。小さい子どもさんなど幅広い年齢層の方に楽しんでもらえる展示をこれからも作ってきたいです」と意気込んでいる。
丹後魚っ知館へのアクセスは、公共交通を使う場合、京都丹後鉄道「宮津駅」で下車し、タクシーで約15分。車の場合は、京都縦貫自動車道「宮津天橋立I.C」で下りてから約20分。