自殺関連報道で「やってはいけないこと」と「やるべきこと」 SNSでの発信にも注意を

黒川 裕生 黒川 裕生

著名人の自殺がセンセーショナルに報道されるたび、世界保健機関(WHO)の「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識2017年版(いわゆる『自殺報道ガイドライン』)」の存在がクローズアップされる機会が目立つようになった。SNSでの発信も、広義の“メディア関係者”。自殺関連報道として「やってはいけないこと」と「やるべきこと」を明示しているこのガイドラインの中身をあらためて紹介したい。

【やってはいけないこと】

「自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと」

「自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと」

「自殺に用いた手段について明確に表現しないこと」

「自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと」

「センセーショナルな見出しを使わないこと」

「写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと」

【やるべきこと】

「どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること」

「自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと」

「日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道をすること」

「有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること」

「自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること」

「メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること」

WHOはこのガイドラインで、「自殺および自殺対策に寄与する要因は複雑で十分に解明されてはいないが、メディアもまた自殺対策の取組を強めたり弱めたりする上で大きな役割を持っている、という科学的根拠が増えている」と指摘。そのことを踏まえて「亡くなった人の遺書、最後の文章メッセージ、ソーシャル・メディアへの投稿内容、電子メール等は公表すべきではない」など、報じる際に注意すべき点を具体的に列挙している。

日本の厚生労働省も、著名人の自殺がニュースで取り上げられるたび、メディア関係者向けに「WHOの『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道の徹底」を呼び掛ける書面を公開。特に最近は「新型コロナウイルス感染症の影響で、健康面だけでなく生活面や仕事面でも不安を抱えている人が多い現状においては、さらに自殺報道の影響が大きくなることが懸念される」と付記するなどして、「センセーショナルな自殺報道によるリスク」に警鐘を鳴らしている。

・自殺報道ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/000526937.pdf

【相談先】

・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556

・厚生労働省 まもろうよ こころ https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/

・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別)

https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

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