コロナ禍の2021年中学入試どうなる? 上位校受験は熾烈な"争い"、受験生の二極化…カリスマ家庭教師に聞く

渡辺 晴子 渡辺 晴子

新型コロナウイルス感染拡大で翻弄されてきた2020年もあと数カ月で終わりです。来春2021年の中学入試を控え、受験学年の6年生は志望校を目指して過去の問題を中心に取り組むとともに模試を受けるなど、いよいよ受験勉強も佳境に入ってきました。

今回はコロナ禍での初めての入試となりますが、例年よりも首都圏を中心に上位校の受験は熾烈な“争い”になるのではないかといわれています。ただでさえ難関な上位校受験がさらに難しいとなれば、受験生にとって最後の“追い込み”は重要です。本番までに今やるべきこととは何でしょうか。そこで、出版累計10万部以上を誇る「文房具フル活用術」などの著者で“カリスマ家庭教師”の榎本勝仁(えのもと・かつひと)さんに「2021年中学入試の展望」も含めお話を伺いました。

休校中に上位校狙いの受験生、勉強量増で成績アップ

榎本さんは、東京・横浜を拠点に有名私立中学受験対策・中学受験専門の家庭教師センター「アクセス」や個別指導塾などを経営。自らも家庭教師や個別指導塾などで直接指導をしており、これまで東京・御三家をはじめ早慶の付属や海城、桐朋など難関中に多数合格させています。

コロナ禍で小学校が休校となった今年前半は、他塾と同様オンラインを駆使しながら授業を進めていったという榎本さんも「上位校に関しては、厳しい“争い”になるのではないかと推測します」と、2021年の中学入試について分析。その理由として、数カ月の休校期間にあるといいます。

「コロナ禍で休校中、まとまった時間が取れたので、上位校を狙う受験生の多くは既に勉強の習慣が身に付いていますから、より受験勉強に集中できたと思います。単純に勉強量が増えましたね。教えている6年生も1日12時間くらいは勉強していたのではないでしょうか。現時点ではありますが、昨年の6年生と比べてかなりできていると手応えを感じています。

例えば、休校中は時間があったので志望校の過去問題も前倒しでやらせていました。実際に解かせたところ、昨年の6年生より点数が取れていて驚きました。私の生徒同様、かなり成績が上がっている受験生は一定数いるはずです。ですから、特に上位校は例年以上に厳しい戦いを強いられると考えられます」などと、休校中の勉強量増加で上位校狙いの受験生の学力が例年以上にアップしていることを指摘しています。

実際、7月に行われた大手中学受験塾の模試で7割を取って偏差値は60程度。昨年の同時期の模試で7割を取った際は、偏差値65近くまで届いたといいます。榎本さんは「模試の出題レベルとしては昨年とそれほど変わらなかったと感じますが、同じ点数でも今年は偏差値が低い。つまり、受験生全体のレベルが上がっていることを裏付けます。こうした現状を踏まえ、御三家を目指していた生徒が第一志望を手堅く早稲田中に切り替えようと検討を始めました」と話します。

受験生の中には成績ダウン、生活リズムの乱れが原因

しかし、「受験生全体のレベルを押し上げたのは、主に成績上位層の子たち」という榎本さん。「逆に中・下位校を目指している受験生の中には、コロナ禍の休校に甘んじて昼間はゲームばかりをしてかえって勉強をしなくなるなど生活リズムが乱れて成績が下がったお子さんも少なくありません。最近、『子どもの成績が伸び悩んでいる』という、あるご家庭からご相談をいただきまして・・・『休校中は昼過ぎに起きて、勉強は明け方の4時までしていた』などとお話しされていました。生活リズムが乱れてしまって効率的な勉強ができず、成績に支障が出てしまったようです。まず入試の大半は午前中に行われるものですから、夜中に過去問題をやってある程度点数がとれたとしても、それを目安に志望校を決めるのは危険です」と説明します。

さらに、2021年入試を目指す受験生の特徴について「コロナ禍の長期休校で勉強を効率的に進められて成績が大幅に上がった子と、かえって生活リズムが崩れ勉強量が減るなどして成績が大きく下がった子の二極化が広がっている」と分析しています。

上位校を目指す受験生にとってはレベルの高い“争い”となりそうで、一方、これまでの勉強の質や量に問題があった受験生は成績が伸び悩んでいる・・・というのが現状のようです。では、受験生は最後の“追い込み”時期をどう過ごしていけばいいのでしょうか? 榎本さんから次のようなアドバイスをしていただきました。

 「これから本格的な模試などを受けられると思いますが、その積み上げの上に入試の合格があるという考え方では準備不足です。この時期は志望校の過去問題に取り組んで、何よりも”相手を知る”ことが重要です。塾の中には過去問題は一度出た問題だからやらなくていいというところもあるようですが…ただ過去問題の解きっぱなしでは効果が薄く、しっかりと分析することです。例えば50分で解いたとして、その時間だけ分析する時間を取りましょう。分析する際は、どのような出題形式が多く、どのような傾向が続いているかなどを捉えて、『残りの期間はあの分野を強化しよう』といった対策を考えていきます。対策については、塾講師や家庭教師の先生に個別で相談してみるとより効果的な勉強ができると思います。対策を立てるにしても本番まで短い期間ですから、入試日から逆算して計画的に勉強を進めていくことをおすすめします」

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榎本さんいわく、過去問題に手つかずの受験生の方々はすぐにでも着手とのこと。過去の行いを悔いるよりも残された時間を有効に使いながら受験勉強に全力投球していただけたら幸いです。

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