炎天下、150キロ巡礼する僧侶たちを生配信 汗だくの姿に「ありがたや」…だけど、なぜ歩く??ネットで話題

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 炎天下、弘法大師像を運びながら徒歩で京都市から兵庫県西宮市までの社寺を巡り、8日間かけて往復する。8月9日から京都の僧侶たちがそんな巡礼を始めました。行程は全て生中継され、連日約5万人が視聴。配信サイトには「ありがたい」「がんばれ」といったコメントが多く投稿されています。さらには沿道で待ち受け、冷たい飲み物を差し入れる人も。お盆のまっただ中も、汗だくになって歩く僧侶たちの姿が、注目を集めています。

 巡礼を始めたのは、京都市右京区の世界遺産・仁和寺(真言宗御室派総本山)の僧侶たちです。動画は「ニコニコ動画」でオンライン開催中の「ニコニコネット超会議2020夏」の企画の一つとして、「仁和寺の法師 だいたい150キロ徒歩巡礼生放送」という番組名で配信されています。

 この「150キロ徒歩巡礼」には、三つの狙いがあるといいます。一つは、弘法大師像を背負った僧侶が歩く様子を生配信することで、弘法大師とともに歩く「同行二人(どうぎょうににん)」の精神を感じてもらうことです。

 二つ目は、仁和寺の裏山にある霊場めぐり「御室八十八カ所」を知ってもらうこと。「お遍路」で知られる四国八十八カ所を模してお堂が88カ所に建てられており、約200年の歴史がある巡礼コースです。

 三つ目は、お布施を募る「勧進」です。かつては、お寺や仏像建立のため各地を歩き、寄付を呼び掛ける勧進の僧がいました。150キロ徒歩巡礼は、勧進を現代に復活させる取り組みでもあります。今回の企画では、オンライン上でニコニコポイントを通じて寄付を募るほか、沿道で直接お布施を受け付けています。

 勧進の目的は御室八十八カ所の復興です。お堂の大半は、近年相次いで襲来した台風で損壊し、巡礼コースも多くの場所が崩落してしまいました。これらを元通りにするには約60億円かかるといいます。その資金を少しでも集めようというわけです。

 8月9日午前8時、御室八十八カ所の再興活動を担当する大石哲玄さんが仁和寺の金堂前を出発しました。法衣に身を包み、昔ながらのすげがさにつえといういでたちです。

 1日目は約10時間かけて石清水八幡宮(京都府八幡市)に到着。その後、連日10時間ほどを歩き、8月12日夜に往路のゴールである神呪寺(かんのうじ、兵庫県西宮市)にたどり着きました。歩きながらカメラマンと軽妙なトークを展開する大石さんは一躍人気となり、「一度仁和寺に行きたい」というコメントも多く書き込まれました。13日夕方、大阪府豊中市の墓地にたどり着いた時点で大石さんの行程は終了しました。

 14日からは仁和寺のナンバー2、吉田正裕執行長(真言宗御室派宗務総長)に弘法大師像が引き継がれました。すでに「執行長は風格が違う」などのコメントが寄せられています。

 吉田執行長は15日朝に、石清水八幡宮を参拝予定。鎌倉時代の随筆「徒然草」に登場する仁和寺の僧侶が果たせなかった、石清水八幡宮に参拝し、「700年ぶりの伏線回収」に挑むといいます。16日昼には仁和寺に帰り着き、境内で法要を営む予定です。動画は「ニコニコ生放送」のサイトで見ることができます。

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