西国四十九薬師霊場を“リモート巡礼” まち歩きのプロが『代参』オンライン配信を企画

鹿谷 亜希子 鹿谷 亜希子

 「まわしよみ新聞」や「歌垣風呂」「大阪七墓巡り復活プロジェクト」など、ユニークな企画で知られる、観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者の陸奥賢さんが、21日から「オンライン企画!コロナ鎮静祈願!西国四十九薬師霊場巡礼代参プロジェクト」を計13回の予定でスタートする。 

 西国四十九薬師霊場は、薬師如来をまつる近畿一円の49ケ寺で構成される霊場。「お薬師さま」の呼び名で親しまれる薬師如来(薬師瑠璃光如来)は、その名のとおり、衆生の病と苦しみを癒してくれる仏さまとして、古代から厚く信仰されてきた。

 「お薬師さんは東方瑠璃光浄土の教主。奈良時代の日本人は中国から東にある日本こそ東方瑠璃光浄土の地と見なし、薬師信仰を大いに盛り上げました。日本はお薬師さんの国と言っていいかもしれない。『代参』というのは、文字通り、あなたの代理に寺社仏閣にお参りしますよ、というものです。高野詣、熊野詣、伊勢詣、善光寺詣など、日本全国各地に今も巡礼の風習はありますが、江戸時代などはお金がかかり、また危険なことも数多くありました。そこで町衆や村落では、巡礼の講を作り、お金を積み立てて、そのコミュニティの代表として、壮健な若者を巡礼に行かせていたわけです」

 今回の巡礼の様子はライブ配信予定で、西国四十九薬師霊場巡礼をオンラインで体感してもらい、新型コロナウイルスが鎮静化したときに、改めて現地に赴いてお参りしてほしいという。代参受付は49ケ寺を巡礼し終える結願まで随時、参加費はおいくらでも構いませんというカンパ制、参加者の名前は巡礼の際に着用する白衣に書いてもらえる。

 陸奥さんが「コモンズ・デザイン(他者の持つ特性と出逢うためのデザイン)」の活動を始めたのは、2011年の東日本大震災以降。これからの日本社会に必要なものは、自分のコミュニティ以外の「他者」に対して、誰かから受けた恩を循環して贈る「恩贈り」のようなシステムではないか。そんな思いを強くして展開してきたのが、オープンソース(無料)で「いつでも、どこでも、だれでもできる」数々の社会実験だ。

 持ち寄った新聞で1枚の壁新聞をつくる「まわしよみ新聞」は、2017年の読売教育賞NIE部門最優秀賞を受賞し、高校の国語教科書にも採用された…と紹介すると、お堅い感じがしてしまうかもしれないが、お風呂屋さんの男湯女湯を使った短歌合コン「歌垣風呂」も、現代と過去を結ぶ異色のまち歩き「大阪七墓巡り復活プロジェクト」も、人とモノ、人と人、人と場所が、「出逢ってなんぼのおもしろさ」に気づき、その場でいっしょになって楽しめるもの。今回の新型コロナウイルスの感染拡大と各方面の自粛は、そんな陸奥さんの全活動を延期・休止に追い込んだ。

 しかし、人と人との物理的隔離にめげていては「コモンズ・デザイン」は広がらない。三密を避けながら「いつでも、どこれも、だれでも」一緒に巡礼を体験できる、オンラインの「代参」を初めて企画した。

 初回は4月21日、第1霊場の薬師寺から順に霊山寺、般若寺と、日帰りで毎回3~4寺を巡礼する。「感染症予防のため、ソーシャルディスタンスを保って車で一人、孤独に回ります。ライブ配信は寺院の山門からスタート、ご飯やトイレのときは配信しませんのでご安心を(笑)」という陸奥さん。寂しそうではあるが、新しい企画準備に余念がない。ライブ配信が見られなかった人のために、あとから録画した動画も別途アップする。 

 お薬師さまにお参りしたいがままならないという方や、陸奥さんのオモロくてトリビアな話を聞きながら一緒にオンライン巡礼したいという方は、「■4/21(火)「オンライン企画!コロナ鎮静祈願!西国四十九薬師霊場巡礼代参プロジェクト~第1回目~」へhttps://www.facebook.com/events/255781732487138/ 。カンパの宛先や今後の予定等も同ページに記載されている。

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