「京都市内の路上で最近見かける自転車マークは何?」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、そんな疑問が寄せられた。確かに京都の街中を歩くと、自転車をあしらった道路表示にあちこちで出合う。調べてみると、自転車の左側通行を促す京都市独自の取り組みと分かったが、当初のガイドラインにない狭い路地に整備したり、道路表示を施して1カ月余り後に工事で掘り返されたりと疑問点も浮かび上がった。市に理由を尋ねた。
道路表示は、かご付きの自転車のシルエットと矢羽根のデザインで2016年に定められた。その当時、京都市は通勤や通学で自転車を使う人の割合が政令市で2番目に多く、市内の交通事故で自転車が関係する割合が4分の1と高かったことから、自転車利用者に車道の左側を走る意識を植え付けようという狙いだった。
市は、整備にあたってガイドラインを策定している。4車線以上の幹線道路や、2車線で歩道がある準幹線道路を主な整備の対象とし、幅4メートル未満の生活道路は原則として整備しないと定めた。重点地区には(1)自転車交通量が最も多い市中心部(2)放置自転車が多い阪急電鉄西院駅周辺(3)東西の交通手段が少ないため自転車利用を促す市南部の企業集積地区「らくなん進都」を指定した。
市は17年度から整備を本格化させ、昨年12月までに約67キロ(道路表示の間隔も含む)の道路で整備を終えたという。昨年度は整備に約1億4400万円の費用を投じ、市中心部で集中的に整備を進めた。本年度も約1億円の予算を計上しており、今秋以降に西院駅周辺やらくなん進都での整備に着手する見通しとなっている。
だが、ガイドラインと実態との食い違いも目に付く。幅4メートル未満の生活道路は整備対象外のはずだが、車1台通るのがやっとという路地でも、自転車の道路表示を見掛けることがしばしばある。事業を所管する市自転車政策推進室にその理由を尋ねると、「ガイドラインで対象にしていなくても、車や自動車の交通量など道路ごとの状況を踏まえ、整備する場合はある」と説明する。
道路表示を施して間もないうちに、はがされてしまうケースもある。左京区の二条通周辺では、道路表示を整備してから1カ月余りで工事で掘り返された箇所があった。自転車政策推進室は「土木事務所などと最大限の調整をしているが、水道やガスの緊急工事もあるのですべてを調整できているわけではない」と話す。
京都市内の自転車が関わる事故は、18年で954件と10年前に比べれば6割も減少している。道路表示も含め、自転車走行のルール順守を促す取り組みが一定浸透している可能性がある。一方で、税金を投じる以上、費用対効果という視点も大事だろう。自転車政策推進室は「今後も効果を検証しながら、道路表示の整備のあり方について検討していく」としている。