長年暮らした愛犬との別れ…喪失感を描いた漫画に広がる共感「一緒に過ごせる時間の大切さ気づいた」

川上 隆宏 川上 隆宏

長年暮らした愛犬との別れを描いた漫画がネットで話題になっています。亡くなったことの現実味を感じられないまま火葬に立ち会う様子と、子犬のころから一緒に過ごしてきた数々の記憶が詳細に描かれ、同じように飼っていた動物を失った経験がある人たちから、共感の声が多数寄せられています。

投稿したのは、駆け出し中の漫画家でもある由(@dekasugikoara)さんです。「実家の犬が死んだ話」として8ページにわたる漫画を7月13日、Twitterに投稿しました。

「20年6月5日AM9時15分 実家の犬が死んだ 16歳と1か月と11日だった」とのフレーズから始まる漫画。亡くなった愛犬の名前は「壱」といいます。まずはストーリーをご覧ください。

壱ちゃんは「おとなしくてちょっとぼけた男の子」だったといいます。子犬のころから由さん一家に育てられ、家族一人一人と、かけがえのない思い出をたくさん作ってきました。しかし次第に訪れる「老い」の兆候。毛が少なくなり、鼻の色も変わり、「毎日できないことが一つずつ増えた」といいます。刻一刻と迫っていた何かを理解はしていたといいますが、「現実味があまりにもなかった」といいます。

火葬を経て、「形がなくなった」壱ちゃん。会話の語尾にいつものように「ねえいっちゃん」と呼びかけられなくなったり、家族のLINEグループに写真がこなくなったり…。日常の中での喪失感がいくつも描かれ、愛犬の存在の大きさや、家族が愛犬に寄せていた思いの強さが伝わってきます。

漫画を読んだ人たちからは、「心えぐられた」「もう涙が止まらないです」といった声が続々と。優しくて穏やかな絵と語り口の作品に「ジワジワと『今まで居た存在』がなくなるってこんなに寂しいんだなあ、と思いました」という人もいました。

ペットを亡くしたことがある人たちからは、自身の体験を重ねて、より共感する思いが寄せられています。「天国に行った愛犬のことを思い出して嗚咽が止まらなくなりました」「形がなくなったという感情がちょうど自分が感じたものと同じでした」「我が家にもいち君のような白い雑種がいました。漫画を読んで彼との思い出が蘇ってきて悲しくも懐かしくなりました」などなど…。

また、年老いた動物を飼う人たちから、一緒に過ごせる時間の大切さに気づいたという指摘もありました。「この先もっと会いに行こう、一緒に過ごす時間を作ろうと思います」「いつどうなるか分からないので、これからも沢山愛して、たくさん思い出作って後悔しないようにしたいと思いました」…。

   ◇   ◇

作者の由さんに聞きました。

―ご実家にいたワンちゃんのお話ですね。

「大学入学時に実家は離れたので、壱とはお盆と年末に帰省した際に会っていました」

―飼われていた動物が亡くなる経験をされたのは初めてでしたか。

「ほかにも壱の母犬、げっ歯類のチンチラなど数匹飼っていましたが、火葬に立ち会ったのは初めてでした。壱が亡くなったのは漫画にも描いていますが、6月5日AM9時で、母が一人で看取りました。壱に会えたのは翌日6日夕方で、火葬は7日昼過ぎに行われました」

―こちらのお話を漫画に描こうと思ったきっかけを教えてください。

「絵が唯一の特技だったため、壱がどんなにかわいい子だったか描きたかったからです。ペットは家庭だけの小さな世界で暮らしている子たちばかりで、壱のことを知っている人はこの世に家族と親戚、一部の知人だけでした。壱のことを、ネットの世界を通して知らない人に少しでも伝えたかったです」

―途中から壱ちゃんの老いる様子が刻々と描かれているのも大変印象的でした。楽しい思い出だけでなく、このようなところを描かれようと思ったのはなぜでしょうか。

「動物を飼うことと、動物が死ぬことが、どういうものか伝えたかったためです」

―日常の中で壱ちゃんがいないことを気づく瞬間についても、いくつか書かれていました。描くのが難しかったりしませんでしたか。

「発散に近い形で記憶をなぞって描いたため、描くのに難しいところはありませんでしたが、涙を流しながら描いてました(笑)」

―また動物を飼われる予定などはありますか。

「実家には3代目のげっ歯類のチンチラがいます。親も年齢が年齢のため、実家で今後犬猫を飼うことは『余程じゃないとないだろうね』と話し合っていましたが…。何が起きるか分からないので、今後また縁があれば良いなとは思ってます。何よりフワフワな毛が恋しいです(笑)。もし再び縁を結ぶことがあれば、今後も変わらず同じように愛して過ごしていきたいです。足の裏のにおいを嗅ぎたいです」

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