群馬県みなかみ町の民家などで20匹以上の猫に水や餌を与えずに放置して死なせた動物愛護法違反の疑いで、今月8日、埼玉県行田市の無職の男(46)が県警生活環境課と沼田署に逮捕された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は10日、当サイトの取材に対し、動物虐待への法の適用などについて解説した。
逮捕容疑は、2018年10月から昨年9月までの約1年間、容疑者が借りていた同町の空き家2棟に複数の猫を閉じ込めて死なせた疑い。少なくとも計20匹の猫の死骸が放置されているのを、地元で動物愛護活動を行うNPO法人の人たちが見つけ、警察に告発していた。
部屋には大量のふんや毛が残り、猫の死体は白骨化や腐敗が進んでいたため、実際は確認された以上の数が死亡したと考えられている。容疑者は、猫が屋外に出られないよう、部屋の扉は外側から釘や針金などで固定してあったという。
小川氏は「たとえ、直接に危害を加えていなくても、部屋に閉じ込めて水やエサも与えずに放置しておけば死ぬということが分かっているはずで、動物虐待に変わりはない」と指摘した。
今回の逮捕容疑となった動物愛護法は今年6月から改正法が施行され、動物殺傷は厳罰化されたが、小川氏は「犯罪事実がそれ以前のものなので改正法は適用されません。遡及処罰の禁止となります。つまり、法の不遡及とは、法令の効力はその法の施行時以前には遡って適用されないという法の一般原則なのです」と説明した。
今回の事件では適用されないが、今後、改正法によって量刑はどのように変わっていくのだろうか。
小川氏は「動物虐待や殺害は、器物損壊罪で『3年以下の懲役または30万円以下の罰金』となるか、動物愛護法で『2年以下の懲役または200万円以下の罰金』でしたが、改正法で『5年以下の懲役または500万円以下の罰金』となりました。器物損壊罪という通り、動物を殺しても物を壊すのと同じで、罰金の額もかなり低い。改正動物愛護法で厳罰化されたとはいえ、人間の場合は複数人を殺害すれば死刑を求刑されて執行される可能性があるのに、動物を複数殺してもこのくらいで済んでしまうので、まだ軽いと個人的には思います」と見解を語った。
小川氏は「現場の写真を見ましたが、言葉では語れない、記事にも書けないくらい悲惨なものでした。動物の『殺処分ゼロ』などが政策に打ち出されて支持されるような世の中でも、実際には虐待があり、つらい思いをしているペットや飼い主がいることも事実。今回は地元で動物愛護活動をされている人たちの努力で容疑者の逮捕に至りましたが、厳罰化と共に、動物の命を考えていく社会になって欲しい」と呼びかけた。