仲良しだった大阪のママ友から、突然2年ぶりの電話…彼女が「どうしても伝えたかったこと」とは

島田 志麻 島田 志麻

みなさん、ママ友とは上手に付き合っていますか?これは結婚を機に東京から大阪へと移り住んだ、学生時代の友人A子の話です。

   ◇   ◇

引っ越しをした当初、大阪の人々の「ぐいぐいとくる」感じに戸惑っていたというA子。テンポよくポンポンと交わされる大阪ママたちとの会話に自分はついていけるんだろうか、ママ友なんてできる気がしない…と不安に思っていたそうです。

しかし、地域の児童館で仲良しのママ友グループができ、次第に大阪ライフをエンジョイし始めたA子。長年の友人として、私もほっとしました。

A子が住んでいたのは大阪ミナミの辺り。道頓堀やアメリカ村の流行りのお店でランチをしたり、お互いの家で料理を持ち寄りパーティーを楽しんだり。地域のお祭りやイベントにもよく一緒に出掛けていたそうです。

なかでもよく自宅に招いてくれたのはリーダー格のB子。夫は経営者で比較的裕福な専業主婦。家の中でもばっちりフルメイクにゴージャスな栗色の巻き毛。つけまつげとジェルネイルを欠かしたことがありません。「一番の趣味は貯金」と公言しつつも、サバサバとして気前のいい、華やかな大阪のマダムといった風情の頼りになるママ友だったそうです。 

A子が離婚して傷心のときには、B子を筆頭に、このママ友たちが本当に親身になって支えてくれたといいます。子どもたちと東京へ戻ることを決め、大阪を去る前日には、ママ友総出で引っ越しの手伝い、夜はさよならパーティー。この日に向けてみんなで作ってくれた、子どもたちが赤ちゃんの頃からの今までの成長をまとめたアルバムに大感激し、涙の別れをしたそうです。

世間でいわれるところの陰湿なママ友ワールドとは無縁な世界だったなあ…と人情の街・大阪で築いたあたたかい友情を胸に、A子は東京での新生活をスタートさせることができました。

大阪のママ友たちとは、フェイスブックで時折「いいね」し合ったり、年賀状を送りあったりする程度ですが、共に子育てに奮闘し、エールを送りあったいわば「戦友」。離れても心はつながってるよね…と絆を感じていました。

引っ越しから半年後、子どもたちと大阪旅行をしたときには、真っ先にこのママ友グループに連絡し、よくみんなでランチをしたお好み焼き屋に集まり、以前と変わらぬ楽しい時間を過ごしたそうです。

リーダー格のB子は「ごめん!先約あってん!」ということで来られなかったのが残念だったそうですが…。

   ◇   ◇

引越して2年経ったある日。仕事の休憩時間にスマートフォンを見ると、B子からの着信履歴が。(えっ、珍しい。B子から電話なんてそれこそ2年ぶり。何かあった!?)といそいそかけ直しました。

「Aちゃん?お久しぶりー元気やった?元気そうやな。まだお仕事中か。ごめんな、かけ直すわ。いつがええ?夜?休みの日がええか?ええって、ええって。申し訳ないから、こっちからかけるって。Aちゃんに、どうしても伝えたいことがあってな…私な、今度東京行こうと思っててん。…うん、またかけ直したときゆっくり話すから。うん、うん、じゃ明日な。こっちからかけるわ。お忙しいとこごめんなー」

(なんだろう、どうしても伝えたいこと?東京に来る?もしかして…離婚相談とか?)

懐かしい友からの久しぶりの電話はやはり嬉しいもの。何かあったら喜んで相談に乗りますとも!と、B子からの電話を待っていたそうです。

翌日の朝10時。ブルブル、ブルブル。スマートフォンに【Bちゃん】の文字が浮かびました。

「Aちゃーん、昨日はごめんなー。仕事フルタイムで忙しいやんな。私も最近パート始めたで。子どもも小学校上がったしな。少しは手も離れたし、やっぱり稼がんと…」

15分ほど経過しても、なかなか本題に入らないB子。

「…でな、ちょっと前やけどな、人生変わるようなことが起こってん」(やっと本題!?)

「私、民謡習ってたやんか。そう、いつも着物でお稽古通ってたやんか。そこにな、ものすっごいキレイな結構トシいってる生徒さんがおんねん。姿勢もピッとしててな、もちろん民謡も一番くらいに上手やし、なんといっても肌。めちゃくちゃ肌がキレイやねん。白くて、モチモチで。ほんま。私、いいですか、言うて触らせてもらったもん。すごかったで。私、言うても50代なかばくらいかなー思っててん。そしたらやで、びっくりやで、65歳って言うやんか!」(えっと、何の話…?)

「それでな、どうしたらそんなキレイな肌になれるんですか、化粧品、何使ってるんですかってめっちゃ食い下がってんけど、ぜんっぜん、教えてくれへんの。でも、毎回毎回しつこく聞いてたら、よっぽどしつこかったんやろうな、やっと使ってる化粧品教えてくれて。まあ、その人も言うたら私の本気度?みたいなのを試してたんやろな(笑)。で、教えてくれたその化粧品、特別なルートで私も早速購入させてもらってな」(うーん、もしやこれは…)

もうお分かりですね。B子が「どうしても伝えたかったこと」とは…。

「いやほんと、自分が使ってみて、みんなに『どうしたの?最近化粧品変えた?』って言われるくらいになって。これは自分だけで独占するのはあかん!と思ってCちゃんにもDちゃんにも勧めたらほんと喜んでもらって『私も購入してみんなに勧める』ってなってな。しかもやで、みんなに勧め始めてたった3カ月でこれ私のパートのお給料超えたんやで。ほんまこれ、キレイになって、お金も儲かって、みんなが幸せになるって思ったら、シングルマザーで頑張ってるAちゃんにも教えなあかん!て居ても立ってもいられなくなってな。今度東京で説明会やろうと思ってな。あ、言うとくけど、これネズミ講ちゃうで。そんなん、違法やんか」

「Bちゃん、教えてくれてありがとう。でも、ごめんね。ぜんっぜん興味ないから他当たってね!うん、また会いたいね、元気でね!」

爽やかに答えて電話を切り、そっと涙を拭くA子。頭の中には、大阪で大好きなママ友たちと過ごした大切な6年間の思い出が、走馬灯のように駆け巡ったのでした。

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