イスはサイズが命! たった2センチの違いで、椅子選びが変わる…体感できる展覧会で目からウロコ

國松 珠実 國松 珠実

 あなたがいつも座っている椅子は、どんな椅子だろう。お気に入りのデザインや有名ブランドの椅子、特にこだわらずに座っている人もいるかも知れない。

ではその椅子、あなたの体に合っているだろうか。

 兵庫県神戸市の「デザイン・クリエイティブセンター神戸(愛称:KIITO)」で『イス・イズ・サイズ展』がスタートした。服や靴と同じく、椅子も自分のサイズに合ったものを提案する体験型の展覧会。ステイホーム中、いつもの椅子に違和感があったあなたも、その原因がわかるかもしれない。

 自分サイズの椅子の見つけ方

 

 ところで、自分に合うサイズの椅子を見つけるためのチェックポイントは?担当の丸山僚介さんに聞いた。

「例えば欧州から日本に輸入される椅子は、室内で靴を履く生活を想定して作られているものが多いです。試しに靴をぬいで『45センチの椅子』にかけてみてください」。勧められるまま、座面高別に並んだシンプルなスツールの45センチの椅子に座る。すると足裏はかかとまで着地するものの、座面の端が太ももの裏に食い込む。座面が少々高いからだが、欧州から輸入されるダイニングチェアの多くはこの高さだそう。

 2センチ違いの高さで並ぶ椅子に順番に座ってみて、筆者は38―40センチの高さが合うと感じた。たった2センチ、されど2センチを体感できる。

  次に、展覧会の椅子の制作を担当した家具デザイナー、山極博史さんが「その人のためだけに作った椅子」が並ぶエリアへ。これらはすべて、家具デザイナーが使用者とのヒアリングの中で希望を聞き、製作したもの。さらにその人の体の大きさやクセ、特徴すべてにフィットする椅子だ。

 人生の1/3は座っている

 たとえば「腰痛もちでペットのワンちゃんと戯れる人」の椅子。在宅ワークで腰痛のある女性が愛犬と快適に過ごすために、楽に立ったり座ったりできるようひじ掛けは片方のみ。台形型で広めの座面は姿勢を変えやすく、体の一部分への負担を軽減できる。ちょっとしたおやつが置けるくぼみがあるのもうれしい。

 もっと横幅があれば演奏しやすいという希望を叶えた「ピアニストの椅子」。さらに左足を踏ん張って弾くクセに合わせ、座面の左角をへこませ丸みを持たせた。椅子の左前脚が下がっているのは、足と椅子との引っ掛かりをなくすためだ。

 畳の部屋に置く「おばあちゃんの椅子」では、畳を傷めない畳ずりの脚を採用。膝の上で編むかご編みの作業の邪魔にならないよう、低く設計されたアームは、立ち上がる際の補助にもなる。

  人は、人生の1/3を座って過ごすという。さらに丸山さんは「良い椅子は、体の不具合を正す役割もある」という。

 人間工学とデザインの両方を兼ね備えた椅子が並ぶ展覧会を見て回って、自分が椅子に合わせるのではなく、「自分に合わせた椅子を作ってもいい」と気づけた。展覧会では、家具を作るクリエイターたちを紹介するタグも配布している。椅子を選ぶための新たな視点を、展覧会で見つけてみよう。

イス・イズ・サイズ展 ―もの選びに、新たな視点を。 http://kiito.jp/schedule/exhibition/articles/39796/
会期:~6/21(日)、7/7(火)~7/26(日)(会期追加)※6/22~7/6は閉廊

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