バンクーバーの裏通りで氷雨に濡れていた子猫…カナダに移住した日本人女性と運命の出会い

渡辺 陽 渡辺 陽

15年前にカナダに移住したイラストレーターのAさん。猫を飼ったことはなかったが、ドッグウォーカーのボランティアをしようと説明会に行った時、シェルターでココちゃんと出会った。初めて猫を抱いた温もりや感触は、Aさんの心を揺り動かした。

氷雨が降りしきるなかポツンと路上にいた猫

カナダで暮らしている猫のココちゃんは、2005年12月中旬、保護団体BC SPCA(The British Columbia Society for the Prevention of Cruelty to Animals)に保護された。バンクーバーでも治安の良くない地域として有名なイーストサイド地区の裏通りに、氷雨が降りしきる中、1匹だけでいたという。生後7カ月くらいだった。

人を怖がらず、敵意をむき出しにすることもなく始めから人なつっこかったので、誰かに飼われていたのかもしれないし、路上で人から食べ物をもらっていたのかもしれなかった。

突然訪れた初めての猫との出会い

イラストレーターのAさんは、2005年春、日本からカナダに移住して半年が経とうとしていた。異国での生活にもなれ、2006年1月、以前から興味のあったボランティア活動をしようと思っていた。たまたまBC SPCAがドッグウォーカーのボランティアを募集していたので申し込んだ。

団体事務局から説明会の案内が来たので、当日、出席するために施設を訪れたが、開催までまだ30分ほど余裕があった。隣接する猫のシェルターを見学してみると、たくさんの猫がいた。その中にココちゃんがいたのだが、彼女だけがニャーニャー鳴きながら近づいて来たという。のぞきこんで見ていると、スタッフに「抱いてみますか」と言われ、Aさんは戸惑いながら「いいんですか?」と聞いた。Aさんは、実家で犬を飼っていたが、猫には無関心で、抱いたこともなかった。

「抱っこするとココはゴロゴロと喉を鳴らして、身体をすりつけてきました。とても可愛いなと思いました」

その日はドッグウォーカーの説明会に参加し、シェルターを後にしたAさん。しかし、夜になると猫のことが頭から離れなくなった。ココちゃんのケージには、生後8カ月と書かれていた。ちょうどAさんがカナダに移住した頃、ココちゃんが生まれたことになる。

「これは何かの運命だと思いました。翌朝、団体の事務局が開く前に事務局に赴き、開くと同時にココのところに行って『この子を引き取ります』と言いました」

ペットショップ=犬猫をお金を出して買うところではない

BC SPCAのスタッフは、口頭で「猫を飼った経験はあるのか」「他のペットは飼っていないか」「20年近く生きる猫もいるが、最後まで責任を持つ覚悟はあるか」「ペットを飼うにはお金がかかるが、定期健診はもちろん急病の時、財政的に対応できるか」といったことを聞いた。その他、コンドミニアムの契約でペットを飼うことが許されているか証明しないといけなかったり、100%家の中で飼うことを約束したりしなければならなかった。

ベランダのある高層マンションに住んでいると、ベランダから猫が落下することが多いので、その防止のために尋ねられるという。日本の脱走防止とは少し意味が違う。

ちなみに、Aさんに聞いたところ、カナダでは、犬猫の生体販売について各都市によって条例が定められているそうだ。ただ、ほとんどのところでは生体販売を禁止していて、ペットショップはあるものの、店頭には保護猫を見せるスペースが設けられ、買い物に来た客が引き取るシステムになっているという。ペットショップ=犬や猫をお金を出して買うところという概念がない。

コロナでペットフードも買い占め!?

ココちゃんを連れて帰り、猫運搬用のダンボール箱を開けると、ココちゃんはポンと飛び出してきた。ココちゃんという名前は、マズルがココ・シャネルのロゴに似ていることにちなんでいる。

ココちゃんは、ひとつずつ部屋をゆっくりとチェックして回り、一通り確認作業が完了すると、猫用トイレで用をたした。

「教えたわけでもないのに、いきなりトイレができるなんて!なんて賢いのと感激しました」

シェルターでは抱っこさせてくれたが、じつは、ココちゃんは抱かれるのが好きではない。しかし、膝の上でくつろぐのは好きだという。

「べたべた触られるのは嫌いなんですが、気分が向いた時だけ頭を押し付けてなでろとせがむし、あまのじゃくなツンデレ女子なんです。たまに思いっ切り甘えてくるギャップがたまりません」 

2020年、カナダでも新型コロナウイルス感染者が10万人近くまで膨れ上がり、シリアスな状況が続いているという。緊急事態宣言が発出された当初は、日本と同じくいろんなものが買い占めされた。ペットフードも例外ではなく、Aさんは、慌ててココちゃんが食べている腎臓ケア用のキャットフードを動物病院をはしごして買い求めたという。

猫も新型コロナウイルスに感染するので、Aさんは家の中にウイルスを持ち込まないよう細心の注意を払って生活している。

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