続々重版出来…「コロナ禍のさなかでも結果を出す」ノンフィクション編集者のSNS活用術を解き明かす

山本 明 山本 明

新型コロナウイルス対策のため4月上旬あたりから全国の本屋実店舗は時短営業や臨時休業に。また、出版社は在宅勤務という不慣れな環境で「本を作り、売る」ことになりました。しかし厳しい状況下でも、読まれる本を世に出す編集者もいます。早川書房(東京・神田)の編集者・一ノ瀬翔太さんはコロナ禍の今、医療従事者とエボラ熱との命懸けの闘いを書いた過去の名作ノンフィクション『ホット・ゾーン』を復刊。発売日の一週間前に第一章を自社の「note」で無料公開しました。すると、24時間で1万人を超える人が読み、5月22日の発売後すぐ、26日に重版決定。現在累計約2万部と売り上げをのばしています。

上記のように「作品の一部」をSNSで先行開示、その後、タイトルをエゴサーチして反応をチェック。感想ツイートを次々リツイートして拡散していくのが一ノ瀬さんのスタイルです。今年に入って担当した5冊のうち、4冊が重版決定しました。

   ◇   ◇

――編集プロセスのどの時点で「SNSで広める」ことについて考え始めますか。

 企画出しの時点です。最初に面白い、と思った感覚を最後まで大事にしています。今『リモートワークの達人(仮題)』という文庫を準備中です。元は2014年に『強いチームはオフィスを捨てる』というタイトルで出た単行本なのですが、一読し、今こそまさに読まれるべき本だろうと確信しました。

――時代を先駆けていたんですね。

 創立20年になるソフトウェア開発の会社なんですけど、世界中に社員がちらばっていて。完全リモートで利益を出しているんです。今読むと「なるほど!」と頷く格言がいっぱいで、これをSNSでどう仕掛けるか考え中です。

――その際、気をつけていることは?

 「いいね」や「リツイート」は大事です。その反応を見つつ、次の手を考えます。「話題になっていること」自体が「話題」になって良いサイクルが生まれる。SNSはどんどんアプローチを変化させることができます。たとえ反応が薄かったとしても、良い反応を得られるように上書きしていこう、ととらえています。

――SNS活用を成功させるカギは。

 こうすれば必ずうまく行く、というのはないけど、「これが読みたかった」と読者の気づきになる本を作りたいし、それがSNSの活用法に繋がっていく。だからコンテンツへの愛が必要です。まずはコンテンツそのものが良くないとどうしようもないので。SNSはあくまでツール。でもどんな良いものでも手に取ってもらわないと意味がない。その良さをいかに未来の読者に届けるかを考えつつ、SNSを活用していきたいです。

   ◇   ◇

今年度後半は、コロナ禍をサバイブするヒントとなるような本も出していきたいのだそう。「最近『MMT』理論が脚光を浴びています。これは簡単に言うと、過度なインフレにならない限り国はいくら借金しても良い、なぜなら自分でお金をいくらでも発行できるんだから…という考え方。今話題の『給付金』問題にも繋がってきます」(一ノ瀬さん)。いったいどんな本を出してくれるのか注目です。

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