「和食」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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世界に冠する日本の和食文化。スシやてんぷらだけではなく、今や多くの和食が外国でも人気が高く、箸を使える外国人も今では珍しくはない。この「和食」を名字としている人達がいる。ただし、読み方は「わしょく」ではなく、そのルーツも食べ物の「和食」でない。
「和食」は高知県の名字で、高知市と安芸市に集中している。ルーツとなったのは、安芸市の西隣、芸西村にあった土佐国安芸郡和食という地名だ。平安時代には見られる古い地名で、読み方は「わじき」。従って名字も「わじき」と読む。
ここには地名を名乗った和食氏がおり、南北朝時代は金岡城に拠って南朝に属していたなど、かなり古くからある名字である。
日本に本格的に洋食が入ってきたのは明治以降。従って、それ以前には洋食という言葉はなく、それに対する和食(わしょく)という言葉もなかった。高知の地名に由来する古い一族が名乗っていた名字が、明治以降に生まれた「和食(わしょく)」とたまたま同じ漢字となり、21世紀になるとユネスコの無形文化遺産の言葉と一致してしまったものだ。