大通りの中央分離帯で固まっていた子猫 保護したものの家には猫エイズの先住猫が…

木村 遼 木村 遼

 沖縄県在住のJさんは、大通りの中央分離帯で固まっていた子猫を保護した。「チビ」と名付けられた子猫は衰弱がひどく、命の危機に瀕しながらも何とか回復。Jさん宅には猫エイズの先住猫がいたが、悩みに悩んで「チビ」を家族に迎えることにした。

中央分離帯に物影が

 2017年10月23日、Jさんは夫人とドライブに出掛けた。その帰り道、見晴らしのいい大通りを車で走っていると、中央分離帯の上で小さく固まっている猫を発見した。半年程前に初めて猫を保護したことから外にいる野良猫が気になっており、運転中も物影があると「猫じゃないか?」と目が向いていたのだ。

 この大通りはとても交通量が多く、放っておくと間違いなく危険。慌てて車を道路の脇に停車させた。運良くこの時は車の通りがなく、車の中にあったタオルケットを持って中央線まで走った。

 近づいて、子猫をタオルケットで包み込んだ。暴れることもなく、すんなりと保護することができた。そのまま抱っこをして車へと急いだ。道路を渡り切ったところで抵抗を始めたが、まだ子猫で人の手を振り解く力はない。小さな手足をバタバタさせる程度だった。

 車の中で子猫の顔を見ると、猫風邪なのか目が目ヤニで塞がっていた。すぐにかかりつけの病院へ向かうことにした。子猫はすぐに落ち着き、移動中はずっと夫人が抱っこをしていた。

 病院では目の処置をしてもらった。子猫の性別がメスだと分かり、自宅に連れて帰り、名前を考えた。道路で保護したことから「マイル」という名前が浮かんだ。しかし、先住猫「にゃん」とのバランスが悪く感じたため、「にゃん」のようにシンプルかつ可愛い名前にしようと夫婦で話し合い「チビ」と名付けた。

 チビにミルクを与えたが、なかなか飲んでくれない。飲んでもすぐに吐いたり、ろくに食べない。1日おきに通院したが、衰弱していくばかりだった。保護して1週間が経ったころには動物病院の先生から「今夜がヤマかもしれない。チビちゃんはもうだめかもしれない」と予期せぬ言葉を告げられた。Jさんは「なんだかんだ言って普通に動いているチビ。死ぬなんて信じられない」と思った。夫人はもうだめかもしれないと思い、涙を流した。

 帰宅後、動物病院で勧められた栄養価の高い療養食を与えた。するとチビは、自らパクパクと食べてくれたのだ。この時「にゃーむ、にゃーむ」と鳴きながら食べていた。すごく可愛く印象的で、今も覚えているという。

 それから2週間ほどの間は鳴きながらご飯を食べていた。どんどん体調も良くなり、完全に復活したチビ。夫婦でチビを家族に迎えたいという思いは一致していたが、一つだけ問題があった。それは先住猫「にゃん」の猫エイズである。

 Jさん夫婦は猫エイズがどのように伝染するのかを調べた。ネットの情報や獣医師に相談したり、専門家の本を買って読んだ。チビに猫エイズが伝染する可能性はどの程度あるのかをとにかく調べた。そして調べる度に凄く悩んだ。

 もちろん、チビが「家にいさせてくれ!」なんて思っているはずもなく、最良の選択は里親を探すことだと分かっていた。しかし、2週間チビを見守り続けて愛情も湧き、家族に迎えたいという気持ちが2人とも強くなっていた。

 いろいろと調べた結果、毎年エイズのワクチン接種を徹底していれば感染する可能性が極めて低いという声が多く、チビを家族として迎え入れた。

 Jさんは「これから先、チビが猫エイズに100%かからないとは言い切れません。しかし、毎日おもちゃを持ってきては遊んでくれとおねだりしたり、膝の上に乗せてくれと鳴いたり、夜は同じ布団で眠ってくれる甘えたぶりを見ていると、これで良かったかなと思っている」と語る。

 幸せな日が1日でも長く続くことを祈らずにはいられない。

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