コロナでの過剰な消毒 猫ちゃんは大丈夫? 低い肝臓の解毒機能…身近な薬剤でも健康被害

小宮 みぎわ 小宮 みぎわ

スティホームなゴールデンウィークに、事件は起こりました。

ペルシャ猫の女の子・3歳のモネちゃんは、お父さんが大好きなので、毎晩、お父さんと一緒のお部屋で過ごします。休日の夜中、モネちゃんは突然驚くほど大量に何度も吐きました。

お父さんはモネちゃんを動物病院へ連れて行きましたが、エコーでお腹の検査をしても異常はありません。しかし、元気はなくじっとうずくまり、全く食べません。翌日以降も粘液の混じった下痢と嘔吐が続きました。すでに胃腸には何も食べ物は入っていないので、下痢も嘔吐も、透明な液体のみ。時々、身体を震わせ、抱くと『ウウゥ―』と、痛みのためなのか悲鳴をあげました。そして、脱水のためか虚脱のためか、舌がシワシワになってしまいました。

突然起こる症状には、その少し前にいつもと違う何かがあった可能性が大です。モネちゃんが具合の悪くなった日の昼間、何があったのでしょうか?

実は、お父さんはその日の昼間に、家の生垣の薔薇に虫がつかないように、噴霧器で薬剤をまいたのでした。その後、お父さんはそのまま着替えをせずに部屋に戻り、モネちゃんのモフモフを撫でたり抱っこしたり、したそうです。

その薬剤には、使用上の注意がいくつも書かれていました。たとえば「本剤は、のど、鼻、皮ふなどを刺激する場合、また、かゆみを生じる場合があるので注意してください」「風向きなどを考え周辺の人家、自動車、壁、洗濯物、ペット、玩具などに散布液がかからないように注意してください」といったようなことです。

人に有毒な薬剤は、猫にはより強い影響が出ることがあります。というのも、猫は毒性のあるものを肝臓で分解する能力が、人間や犬よりもかなり劣るためです。

肝臓は「生体の化学工場」とも呼ばれ、栄養素などさまざまな物質を化学的に作り変える働きを持ちます。有害な物質が体内に入った場合も、肝臓が分解し、毒を減らして体外に出せるようにする仕事をします。しかし、猫の肝臓はその毒を減らす能力が低く、ほかの動物にとっては何でもない薬や化学物質でも、猫たちにとって有害になる場合が多くあります。

動物病院の診察で、お父さんは薬剤を庭木にまいたことをお話されたそうなのですが、薬剤を直接猫に噴きかけた訳では無いので、それが原因とは考えられないと、否定されたそうです。しかし、目には見えませんが、薬剤を噴霧した後のお父さんの身体や衣類には、かなり薬剤が付着していたと私は考えます。その薬剤が空気中に漂って、猫の肺に吸い込まれたり、お父さんと接触することで猫の体表に付着したのかもしれません。猫の場合、体表の被毛に付着すると、舐めて食べてしまいます。それだけ余計に化学物質を体内に取り込んでしまうため、さらに肝臓への負担が増して、健康被害が大きくなるのです。

いま、コロナ騒動で家中に消毒薬をシュッシュされておられる方は、どうぞお気をつけてください。消毒薬としてよく使われるエタノール、次亜塩素酸ナトリウムや第四級アンモニウム塩(これは、消臭スプレーにも配合されています。)は、空気中に漂った後、いろいろなところに付着します。消毒薬はウイルスや細菌を殺しますが、動物の細胞も殺してしまいます。動物の皮ふや粘膜の表面に住んでいる、いいことをしてくれる細菌も殺してしまいます。

世界のいたるところで、過剰な消毒によって健康被害が報告されています。それは、人間もですが、犬や猫、野生動物にも言えることです。しかも、もしかしたらそれはすぐに現れる健康被害では無いかもしれません。何年にも渡って使用していると起こってくる健康被害もあります。もちろん、消毒することで防げる病気がありますが、過ぎたるは及ばざるが如しです。

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