石橋は原田さんの面倒見のいい性格について「役者は人が嫌いな生き物だけれど、芳雄は人が好きでした。受け入れない奴は受け入れないけれど、一度懐に入ると非常に面倒見がいい。決して自分をひけらかすようなこともない。そこに心情的に共有できる人種が大勢集まって、彼を中心とした村的なものが出来上がった。シャーマンのような人でした」と分析する。
桃井も「哲学者というのかな?つまらない映画に出るよりも、芳雄と会話をしていた方が役者としての勉強になった。時代によって役者たちの中心的人物になる人はいますが、その中でも芳雄はとても不思議な感覚の持ち主。ただの伝説には没しない何かがある人でした」と懐かしむ。
映画『一度も撃ってません』は、そんな原田さんの七回忌の席で生まれた作品だ。原田さんゆかりの俳優・スタッフが、作りたいものを作るべくして集結した。主演の石橋が「この映画には芳雄の雰囲気というか、彼の匂いが漂っています」と親愛の情を口にすると、桃井も「だから私たちは原田芳雄プロデュース・石橋蓮司主演映画と呼んでいるんです」と解説。原田さんの意思を継いだ同志たちの手によって、“伝説の穴倉”の伝統は今も生きている。