酷暑の真夏、認知症の妻と病気の夫が一軒家に閉じ込めて飼っていた犬 「もう限界、放置できない」

渡辺 陽 渡辺 陽

奥さんは、オムツだけ履いて玄関まで出てきたり、真夏に毛糸の帽子を被っていたりした。Yさんがボルトくんの散歩に行っても、そのことを忘れて犬を探していた。本人に「なにか病気なの?」と尋ねると、「頭のあれ、認知症」と言って、笑っていたという。

Yさんは、ノミダニの駆虫や散歩、エサや水の用意など、2ヶ月間にわたってボルトくんの世話をしてきたが、このまま続けるのは無理、限界だと思った。状況を見守っていた近所の人やペットサロンの人の協力を得て、「せめてご主人が退院してくるまで、うちで預かろう」と決め、トリミングをした。

正式譲渡されて幸せをつかむ

やがて秋になると、ご主人が退院してきた。Yさんは一連の出来事を説明して、ケージに入れて飼ってはどうかと提案した。ところが、「おしっこのしつけもしていないし、無理だ」と断られた。奥さんだけでなく、退院してきたご主人も週に3日は通院し、1日は仕事に出かけ、帰宅後はだるくてうごけないと言う。

「このままではボルトくんは、元の生活に戻ってしまう。なんの解決にもならない。ボルトくんが健康に暮らすには、このままうちで飼うしかないと思いました」

元の飼い主は、なんのためらいもなくボルトくんを譲渡した。子供が近くに住んでいるようだったが、まったく関与してこなかった。

2018年10月、Yさんの子になったボルトくん。動物病院に連れて行くと、歯は歯周病でボロボロになり、ひどい口臭、顔に穴が開いてもおかしくない状態だった。フィラリアの駆虫薬も一度ももらったことがなかったので陽性だった。

ケージの中でくつろぐボルトくんは、おっとりしている、穏やかな犬だった。元の飼い主に対して、怒りや恐怖は抱いていないらしく、たまに高齢の女性を見かけると、近寄るような素振りを見せるという。

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