酷暑の真夏、認知症の妻と病気の夫が一軒家に閉じ込めて飼っていた犬 「もう限界、放置できない」

渡辺 陽 渡辺 陽

ある老夫婦は、自分の世話もままならないのにキャバリアを飼っていた。連日、殺人的とも言われる酷暑が続いているにも関わらず、エアコンもない部屋に閉じ込められ、エサも水も与えられない日もあった。しかし、老夫婦には、虐待しているという意識がまったくなかった。

 

うだるような暑さの中、一軒家に1匹でいた犬

大阪府に住むYさんの近所に70代くらいの夫婦が住んでいて、ボルトくん(7歳)というキャバリアを飼っていた。夫婦は、ボルトくんの散歩をするたびに逃げられて、追いかけたり、探し回ったりしていた。Yさんは、なぜそんなに逃げられるのか不思議に思っていた。

なんとなく気になったので見ていたら、二軒続きの家の、人が住んでいない家の1階でボルトくんを飼っていることが分かった。そこにはボルトくんだけがいて、昼間は玄関の扉が開け放たれていた。ボルトくんは玄関のタイルのところで過ごしていたのだが、脱走したボルトくんが車にひかれそうになったこともあるという。エアコンひとつない部屋で、夜は窓も玄関の扉もピタッと閉め切られていた。2018年の夏は酷暑で連日殺人的な暑さだったが、そんなことはおかまいなしだった。

犬の世話ができない認知症の飼い主

次第に、飼い主の奥さんは認知症で、ご主人は入院しているということも分かってきた。時折、デイサービスの車が奥さんを迎えに来ていた。                                                                                    

ボルトくんの世話まで手がまわらないのか、エサも水も与えられず、散歩も行かず、ボルトくんは飼い主の帰りを夕方まで待っていた。奥さんが帰ってきても、エサや水のことを忘れていることもあるようだった。ボルトくんは、日中、運良く脱走できると、近所の人が野良猫のために用意している水とエサのある場所に走って行った。

Yさんは、最初は他人の家のことに介入するのをためらった。しかし、自身も犬を飼っている愛犬家なので黙ってはおれず、奥さんに、玄関の外にドッグフードを置いておくように頼んだ。奥さんと一緒に部屋の中に入ると、糞尿と抜けた被毛がからまって、床にこびりつき異臭を放っていた。認知症だからなのか、奥さんは、横でにこにこ笑っていたという。まったく悪気はないようだった。

ボルトくんをよく見ると、身体におびただしい数のノミやダニがついていた。ブラッシングもしてもらったことがないようで、毛玉だらけ。耳の毛玉は、ゴルフボールくらいの大きさになっていたので、重みで皮膚がはがれて出血していた。

後日、Yさんは、その部屋の大掃除をして、少しでも網戸を開けられるようにして、その場を後にした。

「でも、翌日行くと、部屋のあちらこちらにオシッコがしてあって、真ん中にはうんちが転がっていたんです。思わずため息が出ました。このままでは永遠にいたちごっこだと」

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