元繁殖犬フレンチブルドッグのコマちゃんを迎え入れてわかったこと 

岡部 充代 岡部 充代

 

 フレンチブルドッグのコマちゃん(7歳)は、もともと“繁殖犬”でした。3度出産し、立派に子育てをしてきたそうです。そんなコマちゃんを“家庭犬”として迎えたのは、東大阪市に住む豊田さんご一家。一番先にコマちゃんを見初めたのは、奥様の時子さんでした。出会いは2年前の夏――。

 「フレブル専門のブリーダーさんがやっているショップの前を、たまたま主人と通りがかったんです。入ってみると、赤ちゃんばっかりの中に、1匹だけ成犬の入ったケージがあって。お店の人に聞くと、繁殖犬を引退して、里子に出す予定だということでした」(時子さん)

  コマちゃんの腕には点滴や注射の、お腹には手術の痕が痛々しく残っていたそうです。飼っていたフレンチブルドッグを13歳で亡くして2年半。時子さんは新しい犬を迎えるつもりはありませんでしたが、家に帰ってからも、コマちゃんのことが頭から離れません。そして、考えに考えた末、ご主人に相談しました。

 「もし、あの子の誕生日が身近な誰かの誕生日や命日と同じだったら、引き取ってもいい?」

  ご主人の了解を得て、そろってお店を再訪。コマちゃんの誕生日を尋ねると、なんと、次男の誕生日と同じでした。その瞬間、時子さんではなくご主人が、「連れて帰ります!」と申し出たそうです。

 

 諸手続きが必要だっただめ、数日後に改めて迎えに行き、受け取った血統書を見てみると、コマちゃんの父犬の誕生日が、ご主人と一緒であることが分かりました。「コマはウチに来る運命だったんです」。時子さんの言葉もうなずけます。

 家に来て1週間はごはんを食べず、みんなを心配させたコマちゃんですが、基本的にはおとなしくていい子でした。ただ、子供を産むこと以外に必要とされなかったのか、何も教えられていませんでした。

 「恐らく首輪もリードも付けたことがなかったと思います。お店の裏にドッグランのような広いスペースがあって、そこで走ってはいたようですけど、お散歩はしたことなかったでしょうね」(時子さん)

  もちろん、「オスワリ」や「マテ」も知りません。トイレトレーニングもイチからです。成犬になると、新しいことを教えるのは難しいと言われます。しかも、コマちゃんはすでに4歳10カ月。前途多難かと思われましたが、驚くべきスピードで吸収していったと言います。

 実は当時、時子さんはドッグトレーナーの養成学校に通っていました。その学校には、愛犬に決められたトレーニングをし、その動画を撮影して提出するという課題があったのですが、卒業まで1カ月余りの時期に飼い始めたにもかかわらず、あっという間にクリアして、無事にトレーナーの認定資格を取得できたそうです。

 「何も知らなかったから、かえって真っ白なところにどんどん入っていったのかもしれません。コマは私をトレーナーにするために、ウチに来てくれたんだと思います」(時子さん)

 

「オスワリ」「フセ」「マテ」などの基本トレーニングを終えると、時子さんは楽しい「トリック」を次々と教えていきました。そのトリックも、あっという間に覚えたコマちゃん。「ウチの子、天才でしょ」。そう言って笑う時子さんを、コマちゃんが少し自慢げな表情で見上げていました。

 「5歳からでもしつけはできます。飼い主次第で犬は変わる。それをコマが教えてくれました。ブリーダーさんに会いに行ったとき、『顔が変わった。やさしい顔になった』と言ってもらったんです。うれしかったですね。家族みんながコマに癒されていますし、ウチの子になってくれて幸せです」(時子さん)

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