大阪人なら読めて当然なのだろうか?「放出」「立売堀」「喜連瓜破」などの、いわゆる「難読」な地名・駅名。「大阪」や「駅名」について語る書籍やまとめサイトでもたびたび話題に上るほどの難読ぶりとあって、もしかしたら大阪人でなくても簡単に読めてしまうかもしれない。ちなみに答えは、左から「はなてん」「いたちぼり」「きれうりわり」です。
こうした地名や駅名が紹介される時によく言及されるのは、「大阪には難読地名が多い」ということ。たしかに探せばいくらでも「難読」は出てくるが、大阪人の記者に言わせてみれば、同じ近畿の中ではなんとなく京都や奈良の方に多いような気もする。「大阪に多い」という説には、何か歴史的な根拠でもあるのだろうか?有名な難読地名は市内に集中しているとみて、大阪市史料調査会調査員の古川武志さんを訪問。「正しいかどうかわかりませんが…」としつつ、軽妙な語り口で解説していただいた。
「他府県よりも大阪に難読地名が多い、というのは都市伝説ちゃいますか? 京都や奈良はもちろん、北海道、東北、沖縄とかの方がもっと読まれへんものが多そうですよね。東京にも死ぬほどあると思いますよ。『日暮里』(にっぽり)とか、普通は読めませんもん」
「大阪市内に多い?」という予想に対しては、「難波宮があった当時、今の市内中心部は海の底だったので、ものすごく古くて難しい地名が残っているのは同じ市内でも郊外の方になると思います」とのこと。
また、「地名は基本的に音(おん)ありきで、漢字は後から当てられます」とも。
たしかに、「立売堀」などは、伊達家が作った堀を「だてぼり」ではなく「いたちぼり」と呼び始めたことが起源だとも言われている(※諸説あり)。
古い地名が後世まで残りやすくなるのには、たとえば「水源地」や「市場」などの特徴や機能が地名に反映されることでその土地のイメージが固定化することなどに加え、「そこに昔から住んでいる人が多いこと」も挙げられるという。
「歴史が古くて昔からの住人が多い所では、もし行政が難読地名をわかりやすいものに変えようとしたら反対運動が起こると思います。『この名前は太閤さんから賜った大切なものやで!』とか『江戸時代から続いてきた名前をなんで変えるんや!』とかいう風に。そうなるとなかなか新しいものに変わりにくいですよね」
「仮に『大阪に難読が多い』という説が正しいなら、大阪には、歴史ある地名を大事に残していきたいと思っている人が多いということでしょうか。普通なら、難読地名なんて読めへんし画数多かったりするし、面倒くさいものであるはず。それでも保存していこうとするのは、自分たちの地名に対する誇りやアイデンティティーの表れやと思います」
「難読地名って、単に『これ何て読めると思う?』と面白がれるものだけでなく、実は大阪人の価値観を見出せるような、もっと深いものかもしれないですね」
歴史をさかのぼれば、あなたの町の地名や駅名からも大阪人の「心」が読み取れるかも。それでは、以上の話を踏まえて、さらに難読地名をご紹介します。
まずは「吹田」「十三」「枚方」はどうだろう?こちらは左から「すいた」「じゅうそう」「ひらかた」で、大阪人なら「こんなん全然『難読』ちゃうやん!」と言いたくなるところ。ところが、他府県の人にとっては立派な「難読」なのだそうだ。
さらに比較的ローカルな「柴島」「弥刀」「茨田大宮」にいたっては、大阪人でもスラスラ読める人は少ないだろう。こちらは左から「くにじま」「みと」「まったおおみや」です。どうですか?読めましたか?