黒ラブと猫3匹の仲良し犬猫が出迎えてくれるまちの本屋さん

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 JR大阪環状線の弁天町駅すぐそばにある書店「ブックスB」では、犬1匹、猫3匹が仲良くお客を出迎えている。黒ラブラドールレトリーバーのゴン(オス、10歳)と、茶トラのフク(オス、10歳)、サバ白のナナ(メス、5歳)、白黒のダイキチ(オス、1歳半)だ。地域猫活動も行っている店主で飼い主の大野勢津子さん(63)は「この子たちがいるから頑張れる」という。大野さんに話を聞いた。

 大野さん:黒ラブのゴンがこの店にやってきたんは2010年9月ころ。70歳すぎの女性が飼っていたんですが、病気で手術をすることになり、治っても大型犬はもう飼われへんからと、飼い主募集の張り紙をあちこちに貼ってね。うちが引き取ることになったんですよ。

 その年の暮れ、(同店が入居する)マンションに居着いたのが茶トラのフク。一時、行方不明になって心配してたんやけど、翌年5月、2ブロック先の寿司屋さんで「並んでる客にめっちゃ媚び売ってる茶トラがいるねんけど、あれ、フクちゃんちゃう?」とお客さんから教えてもらい、駆けつけると、やせ細ったフクやったんですよ。それで連れて帰り、うちの初めての猫になりました。

 ゴンは吠えないし、穏やかで優しい性格。犬と猫やけど、ゴンとフクはすぐ仲良しになりました。フクは来たその日からゴンにべったりで、夜はゴンのお腹のとこで丸まって一緒に寝てました。

 フクが来たのがきっかけで、地域猫活動をしているエサやりさんの女性らと知り合いになり、当時も近くの公園などは野良猫が多かったんで、「このままほおっておいたらあかんよね」とのことで、2015年11月に地域の有志らと地域猫活動をするボランティアグループ(会員は約30人)を立ち上げました。以来、港区を中心に、野良猫へのTNR活動(Trap Neuter Returnの略。野良猫が増えないよう捕獲、不妊手術をし元の場所に戻すこと)を行なっています。

 グループで最初にTNRを手がけた際に保護した子猫がナナです。一度は新しい飼い主さんの元へ行ったのですが、そこの先住猫とうまが合わず、戻ってきてしまったので引き取ることに。ダイキチは18年9月、TNR活動中に知り合った大正区の女性宅に、ある日突然迷い込んできた子。親猫とはぐれたらしく、まだ生後2カ月半くらいでめちゃ人懐こい子やったんで、店の子に向いてるなと。口元のほくろがチャームポイントで甘えん坊。いまは書店員として修行中です。

 そんなこんなで犬1匹、猫3匹になりました(笑)。もう増やせませんが、みんな何らかの事情を抱え、ここへ来るべくしてやってきた子たちやと思ってます。ゴンはリードにつないで店の奥、ナナはレジ後ろの窓と、各々好きな定位置があります。お客さんを招くためというより、この子たちの家はたまたま本屋さんやったというだけ。ナナは入ってきたお客さんの足にスリスリして店内を案内し、フクはお客さんの膝の上に乗っていくこともあり、お客さんは「自分の家に遊びにきてくれた人」というふうにと感じてるんやないかな(笑)

 ボランティアグループでは、年間100匹程度をTNRしています。手術の費用は会費や寄付、年4回開催のバザーの収益からなんとか捻出しています。地域で新たに生まれる猫は少なくなりましたが、あからさまにダンボールに入れて捨てられていたり、引っ越しや病気などで飼えなくなった猫を外に放ったと思われる猫がいたりで、外猫の数が減った感はあまりないですね。やってもやってもというのが正直な感想です。

 でもね、最近こんなことがありました。近所の小学生の男の子と女の子たち数人が一緒に遊んでいるとき、口から血を出して瀕死の子猫を見つけたんです。子どもたち同士で話し合い、2班に分かれて、女の子たちはその猫を保護して病院へ連れていき、男の子たちは「本屋のおばちゃんとこへ知らせに行こう」と店に駆け込んできたんです。女の子たちが連れていった病院はその時閉まっていたため、彼女たちはその後、その猫を連れてうちの店にやってきました。一刻を争う状態だったので、私やボランティアグループの仲間が他の病院へ連れていくなど手を尽くし、介抱したのですが、結局救うことはできず、翌日その子は亡くなりました。

 小学生たちは再び、亡くなった子猫の元へ集まり、箱に花や手紙を入れて、泣きながら見送ってね。私は「助けられへんかったのは悲しいけど、精一杯やったんやから」と声をかけました。無責任に飼育放棄する人が絶えない一方で、子どもたちが目の前の子猫を救うため、病院へ連れていくなど自分たちで考えて行動を起こし、小さな命と向き合ったこと。それがとっても嬉しかったです。

 店には「ペットを飼いたくても飼育不可の物件に住んでいるので飼えない」という方や、「猫をさわるのは初めて」という幼い子どもを連れた夫婦などもよく来られます。ゴンやフクたちの姿を見つけると、しばらくじっと抱っこして動かなかったり、ご両親が「優しくなでるねんで」「嫌がるようなことしたらあかんで」と犬猫との接し方を一生懸命子どもに教えたりすることも。そんな姿をみてると微笑ましくなり、この子たちがここで暮らしててよかったなと思います。本屋を頑張れるんも、地域猫活動を続けられるんも、この子たちが元気を与えてくれてるからなんです。

【店名】「ブックスB」
【住所】大阪市港区波除3-1-5
【電話】06-6581-7668

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