スタジアムの中で泊まれる!力士たちと一緒になる時も? 大阪にある一風変わったユースホステルとは

平藤 清刀 平藤 清刀

スタジアムの中に設置された、珍しいスタイルのユースホステルがある。大阪市南部の長居公園にある「大阪市立長居ユースホステル」だ。2002年に日韓サッカーW杯、2007年に世界陸上の会場となったことでも知られる「ヤンマースタジアム長居」の建物の中にあるといい、国際的ビッグイベントが開かれたスタジアムの中に宿泊できると人気を集めている。大相撲春場所が行われる3月には相撲部屋の宿舎にも利用されるという。そんな長居ユースホステルの中を覗いてみた。

大阪万博の年にオープンして今年で50周年

ユースホステルがホテルや旅館と違うところは「旅の好きな青少年のために作られた、安全かつ安価に宿泊できる、会員制宿泊施設」(長居ユースホステルホームページから抜粋)ということ。1900年代初頭にドイツの小学校教師リヒャルト・シルマンが提唱し、専用ホステルを設置したことに始まる。日本では1955年に、北海道で第1号の施設がオープンした。

一般財団法人「日本ユースホステル協会」が発表した平成30年度事業報告書(http://www.jyh.or.jp/koukai/30houkoku.pdf)によると、2018年12月31日現在で国内に188のユースホステルがある。そのうちのひとつ長居ユースホステルは、「ヤンマースタジアム長居」という競技場の中に設置されたユニークなスタイルの施設である。

ヤンマースタジアム長居といえば、大阪のJ1サッカーチーム・セレッソ大阪のホームグラウンドであるほか、各種イベントが開かれることで知られる。ネーミングライツが導入される前は長居陸上競技場という名前だった。

長居ユースホステルのはじまりは1970年、大阪万博開催の年までさかのぼる。

「海外から多くの若者が大阪に訪れることが予測されますよね。宿泊施設を増やす施策の一環で、当時の長居陸上競技場内につくられたと聞いています」と語ってくださったのは、長居ユースホステル所長の大原裕一さん。「万博が開幕したのが3月15日で、その1週間前にここがオープンしました」

はじめの計画では、1年間営業して廃止することになっていたという。だが「せっかく使えるのだから、という声があったみたいです」(大原さん)ということで、営業が継続されて今年で50周年を迎える。

当時は、いわゆるバックパッカーのような若者が年間1万人ほど、安い宿を求めて訪れたという。万博の次にやってきたピークが、1990年4月~9月にかけて鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会」で、この年の利用者は1万6千~1万7千人にまで跳ね上がった。その後ピークが過ぎてもしばらくは1万3千~1万5千人をキープしていたが、ここ2~3年は外国人客が減っているという。

その理由について、大原さんはこう分析する。

「同じような価格帯で営業する民泊が、爆発的に増えましたね。さらにいえば、宿の探し方がネット中心になったことでしょうね」

ネットで宿泊先を探す条件は「新しい」「きれい」、そして「安い」こと。ユースホステルは価格帯で、とくに個人の旅行者に選択されにくいようだ。

それでも、日本人の団体客は比較的多い。会議室やサロンなど、民泊にはないスペースを備えていることが強みとなって、地方から遠征にやってくる少年野球やサッカーのチーム、会議室を利用した「お勉強合宿」、吹奏楽やコーラス団体などに需要があるという。楽器の演奏や合唱の練習などで、どんなに大きい音を出してもいいのだそうだ。

ちなみに長居ユースホステルの宿泊者数は、188施設のうち9位(2018年/12,219人・前出の事業報告書より)という位置にある。

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