千葉県のカフェの駐車場にいた野良猫のどらやきくん。飲食店なので、オーナーさんは、どこかよそに行ってほしいと思っていた。たまたまそのカフェに行った猫好き夫婦の石井さんは、どらやきくんにごはんをあげに行くようになったが、そのことを知ったオーナーさんは激怒した。
いま、保護しなければ!
2010年11月、千葉県に住む石井さんは、コーヒーを飲みに行ったカフェの駐車場で1匹の猫を見つけた。もう大人の猫で野良猫のようだったが、車を停めたら寄ってきた。片側の後ろ脚が不自由なようだった。カフェの人に聞くと、「飲食店なので、ここにいられると困る」と迷惑そうに言っていた。猫好きの石井さん夫妻は、猫のことが心配になった。
人懐っこいが、抱き上げようとすると警戒して、車に乗せようとすると暴れて嫌がった。保護できないので、毎日ごはんをあげに行ったという。
それからひと月経たない頃、石井さん夫妻は、カフェのオーナーさんに怒られた。ものすごい剣幕だった。
「ここで保護しないと保健所に連れていかれるんじゃないかと思いました」
譲渡するくらいなら
その日の夜、猫を無理やり車に乗せると、キャリーの中で血だらけになるくらい暴れた。家では一部屋あてがって放したが、落ち着いていた。翌日、動物病院に連れて行きレントゲン撮影したら、骨折した後に骨がゆがんでくっついてしまっていた。ただ、普通の生活には差し障りないということだった。
石井さんは猫を保護して多頭飼いしているので、脚の悪い猫を一緒に飼うとかわいそうだと思った。みんながキャットステップに登るのに、その子だけ危ないからと禁止するのが辛かったのだ。譲渡サイトで里親を募集すると、すぐに希望者が現れたが、脚の具合が分かる動画を見せてくれと言われて見せると、「思ったより調子が悪そうだ」と断られた。
「こんな思いをするくらいなら、これ以上探さない。うちで飼おうと思ったんです」
名前は、どらやきくんにした。
取り越し苦労
どらやきくんについて獣医さんに相談すると、「大丈夫、大丈夫、猫だって危険だと思ったら高いところには登らない。石井さんは過保護だよ」と言われた。石井さんは、「やるしかない」と腹がくくれたという。
案の定、どらやきくんは危ないところには行かない。脚が不自由な生活に本人がなれていて、縦横無尽に遊んでいる。ただ、時折古傷が痛むようなそぶりを見せることもあり、脚の周りを触られるのも嫌がる。
数年後、石井さんは、どらやきくんがいたカフェでアルバイトしていた人に偶然出会った。どらやきくんが脚を怪我したのは、カフェの屋根の上で猫とケンカして転落したのが原因だと分かった。それ以来、急激にやせ細って、かわいそうになってごはんをあげていたそうだ。どらやきくんの過去を知った石井さん。
「痛かっただろうな、ごはんも思うように取りに行けなかったんだろうなと想像して辛くなりました」